青
「百薬の長がお酒であるならばマヌカハニーは千薬の、いや万薬の長といって差し支えあるまいぞ!」
マヌカハニーに市中遭遇する度にあの芳醇で野性味溢れる芳香と共に脳裏に浮かぶのが、さもありなんと喧伝する我が師の姿であります。
中学生の時分に声楽の世界に迷い込み早も8年。齢22の若造にはあれど紆余曲折を経て結局音大にまで来てしまった私でありますが。そんな私が今日告発致しますのは絢爛美麗なる声楽の世界の蜂蜜事情にございます。
まずお話しておきたいのは諸声楽家の皆さまは基本的にマヌカハニーと偕老同穴の関係にあるということです。
「喉が痛い?マヌカハニーを舐めるのだ!」
「声の調子がおかしい?マヌカハニーを舐めてお眠り!」といった具合に 我らが民間療法の頂点に君臨するのがマヌカハニー様々であります。
それはもう、事ある毎にマヌカハニーを贈り合う訳ですからきっと日本中のマヌカハニーの半分くらいは声楽家とのど飴製作会社様が独占されているのでは無いかと思われるわけです。
そうでないとお歳暮にマヌカハニーの詰め合わせが、誕生日に種々様々なマヌカハニーの贈り物が一同に会するということはないはずなのであります。
そんなもう我々の世界になくてはならない存在となりつつあるマヌカハニーですが、私の彼らとの出会いはとっても甘いアマービレな(愛ある)ものでした。
お正月もすぎて雪の降りしきる冬の朝。
灯油ストーブの前でプルプル震えていた私はちょうど鼻詰まりのようにピーピーと音を立てて沸いているやかんと同じ音を出しながら鼻炎と喉痛に苦しんでいたわけであります。
中学3年生の冬、受験の天王山が夏休みであるならば冬休みは関ヶ原でしょう。
音楽高校声楽専攻を受験する中学生が直前に風邪などひいていたのでは受かるものも受からないのであります。
あぁこのまま治らなければ夢にまで見た私の音高ライフが!さらば私の青春!あぁ…なんて可哀想なワタシ…
そんなことを思うと涙が込み上げ鼻水も止まらずぐちゃぐちゃなわけでありますが。
そんな心中阿鼻叫喚の私のもとに届いたのが我が師からの小包でした。
中には小さな黒い容器とメモ書きのお手紙が。
手紙の内容はよく覚えていませんが「これでも舐めて養生おし!大丈夫だからネ!」といったような感じだったと思われます。
それが心中阿鼻叫喚劇を演じていた私にはとっても嬉しかったわけであります。
初めて遭遇する野性味溢れる芳味にビクつきながらも心まで甘く溶かしてくれたような。そんなマヌカハニーのあの味をどうして忘れることができましょう。
そして色々あり音高には合格し、音大では積年の苦労を便器に投げ捨てようとしている私です。
追伸
冒頭が音高に合格した際の恩師の姿になります。
(完)
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