みどり
3年前、内科の手術で2週間程入院した。そこで出会った同室の詩子さん(仮名)。詩子さんは50代で私より大きな病気を患っていた。それでも明るくてお話好きで私によく話かけてくれた。夕食前の時間、必ずテレビの上の引き出しを開けたり閉めたりしていて少しそれが見えた時、ペットボトルのような入れ物をしまっていてずっとそれが何か気になっていた。ある日、詩子さんからその物について話してくれた。それは、はちみつだった。娘さんと旅行に行った時に買ったらしい。「水で割って飲んでいるの。ジュースよりも絶対身体にいいしけっこうおいしいんだよ」と言い少し飲ませてくれた。はちみつを水で割るなんて当時考えもつかなかった組み合わせだったが本当においしかった。「毎日夜に飲んでいて気分転換にもなるんだよ」、「美容にもいいしね」そんな話を聞いたら私も毎日飲みたくなった。退院した次の日、すぐに詩子さんから教えてもらった場所に買いに行った。手術後でまだ傷が痛むし自宅から車で片道2時間だったけどあの美味しさと詩子さんの話を思い出すといてもたってもいられなかった。無事に購入し、お店の方に作り方や分量など丁寧に教えてもらった。それから毎晩、自分で作って飲んでいる。ホットで飲んでみたりレモン汁を入れてみたり赤い色のはちみつやフルーツの味がついたものを試してみたりもした。違いを感じられるとやはり面白いものだ。飽きが来ることもなく夜の習慣として定着し、時々詩子さんのことを思い出しながら飲む日もある。特に仕事から帰ってきて家事などやる事が終わったあとに香りをしっかりと味わってから飲むとほっとする。テレビを見ながら、ぼーっとしながらその日によって違うけど私にとって幸せな時間を提供してくれている。それに風邪などほとんどひかず毎日元気に過ごせていることや肌の調子が良くなったのもきっとはちみつのおかげだ。今でははちみつが大好きになりリップクリームやシャンプー、リンス、ハンドクリームに至るまで自分の身の回りの物はほとんどはちみつ入りの物を選んでいる。はちみつ入りの文字を見ると決まって試したくなる。自分のお気に入りのものが増えると人生の幸福感は増す。詩子さん、自家製はちみつジュースを教えてくれてありがとう。
(完)
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