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蜂蜜エッセイ応募作品

日曜日のホットケーキ

ハッピーパンダ

 

 子供の頃、日曜日の朝食はホットケーキと決まっていた。ホットケーキが大好きだった私は、その日曜日、誰よりも早く目が覚めた。お腹が空くと、寝ていられない。頭の中には、バターと蜂蜜をたっぷりかけたホットケーキがあるのに、それが目の前にない苦しさ。お腹がグーグー鳴りだした。また寝ようとした私は、目を閉じ、何かホットケーキではないものを思い浮かべようとした。すると、『ちびくろサンボ』のトラが出て来た。木の周りを回り始めたトラたちは、次第に溶け、おいしそうなバターになった…。もう駄目だ!私は目を開け、そっと布団から出た。外はまだ薄暗い。しかし猛烈にお腹が空いていた私は、生まれて初めて、自分で調理を始めたのだ。
 やり方は、分かっている。ホットケーキミックスに、水ではなく牛乳を入れ、ダマがなくなるまでかきまぜる。それを、熱したフライパンに流し入れ、生地にぷつぷつと穴が空いてきたら、フライ返しでひっくり返す。いい感じ。トラの模様になっている。竹串で差して引き、竹串に生の生地がついていなければもう大丈夫。中まで焼けている。
 フライ返しでお皿に移し、上に四角く切ったバターをのせる。すると溶けたバターが、ホットケーキのてっぺんから流れてくる。仕上げは蜂蜜だ。うちの蜂蜜は、瓶に入っていた。金属の蓋は、いつもきつく締まっている。それは素手では開かない。きつきつに締まっているときは、ガスの炎にあて、金属を緩くしてから開ける。しかし、きつきつではない場合は、たいてい、濡れた布巾をあててひねればよかった。濡れた布巾をあててひねる。一回では開かない。「うーん…」と声を出しながらひねるると、蓋はじわじわと動き、ある瞬間するっと回転し、開いた。
 うちの蜂蜜というのは、いつも白く固まっていた。保存状態が悪かったのだろう。私はカレースプーンで、その固まった蜂蜜を掬い、バターの横にぼてっと落とした。すると、固まっていた白い蜂蜜は、溶けて黄金色になって流れだした。その、美しいこと…。ナイフで八等分すると、その切れ目に黄金の液体が染み入った。私はため息をつき、一切れをフォークで突き刺し、端から食べた。なんとおいしいものが、この世にはあるのだろう。私は感動しながら、一口、また一口と食べて完食する。お皿には、バターも蜂蜜も一滴も残っていない。全部、ホットケーキで布巾のように拭き取ったからだ。
 一人で王様のように満足していると、隣家の鶏が鳴き、外が急に明るくなり、母が起きてきて、「あら、おはよう」と言った。

 

(完)

 

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