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第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

ミツバチ愛でる姫君

SUI

 

 昔から「風の谷のナウシカ」に憧れている。世界の深淵なる摂理と向き合い、仲間を愛し、自分を捧げ世界を救う勇敢で美しいみんなの姫さま。自然環境や気候が変化し、いかに世界と調和して生きるかがリアルな課題となった昨今である。ナウシカ・トトロ・もののけ姫など、ジブリ作品は私たちに「自然や世界」への感受性の種を撒き続けてきた。豊かな自然に恵まれ、八百万の神々を身近に感じ生きてきた日本、のはずだけど、私たちを生かしてくれている存在なのにも関わらず「虫が好き」という人はそう多くはない。実際私だってそうだ。桜の下の毛虫にビクビクし、ベランダの蝉に恐れをなし、ゴキブリなどと出会ってしまえば、ひと固まりした後、おもむろにゴキジェットをつかむのである。
 そんな私が唯一、思いがけず心から「かわいい」と思った存在がミツバチだ。2年前の春。寒い日々が明け始めた陽の降り注ぐ暖かい日、通りの梅の木が花を咲かせ始めていた。梅の香りに誘われて木に近づき花と青空を見上げる。するとミツバチが数匹、花から花へ飛び動く姿が目に入った。毛に覆われた丸っこいふさふさが、ちょんちょんせっせと花の間を舞う。刺そうという気持ちなど少しもなく、何やら夢中で動き回る姿が健気で愛らしい。花に引き寄せられたもの同士、私はまるで仲間のような気持ちになって「なんて可愛いのだろう」としばしじっと見つめてしまった。心がポカポカと温かくなった。虫を可愛い!と思ったことが自分でも意外で、ミツバチを飼う人が「蜂は可愛い」と語るのを理解できた瞬間だった。
 虫が可愛いと心から感じたことで、私は憧れのナウシカに一歩近づいたはずだ。なぜならナウシカのモデルは平安時代に成立した『堤中納言物語』の中の『虫愛づる姫君』というお話なのだ。眉を抜いたりお歯黒にしたりという平安時代の貴族文化の風習に従わず、毛虫や昆虫を愛する風変わりな姫(と周りから見られているの)が「虫愛づる姫君」。蝉や毛虫までは急に可愛いとは思えないけれど、ミツバチに関してなら、私も虫愛でる姫君になれる。
 自分を生かしてくれる存在を慈しむ感覚は、本当はすごく大事なのかもと思う。ミツバチは「虫」なのに、人間にも「養蜂」という能動的な関わりを持たせてくれる貴重な存在。自然世界と人間を繋ぐミツバチを大事にすると、世界はもっと豊かに平和になるかもしれないな、なんて思ったりする。

 

(完)

 

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