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ミツバチと共に90年――

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第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

蜜バチと自転車

祥雪(しょうせつ)

 

 朝食をたべながら、何気なくテレビをつけてみると、自転車で全国を巡る旅番組をやっていた。毎回視聴者から送られて来た手紙をもとに、思い出の場所を訪ねるのである。今回のロケは、白鳥のいる公園がスタート。池のほとりで手紙を紹介し、いよいよこれから四十五年前の思い出の海岸へ出発だ。地図を見て場所を確認していると、何やら向こうの方からカメラに近づいて来る女性がある。
 「こんにちは。ここで主人と二人で養蜂をやってて、今日は朝から蜜搾りをしてたんですよ。」

 予定変更。ロケ隊は出発を見合わせ、急遽蜜蜂の巣箱を見せてもらうことになった。箱は重箱式になっていて、羽根にいっぱい花粉をつけた小さなニホンミツバチたちが、所狭しと立ち働いていた。
 するとそこに、一匹のキイロスズメバチが現れた。どうやら蜂蜜を横取りしに来たのらしい。突然のスズメバチ登場に、スタッフは動揺した。
 (一体どうなるのだろう?)と思って、固唾をのんで観ていると、養蜂家の奥さんが、
 「これでやっつけるんですよ。」と言って、巣箱の横からハエ叩きを取り出した。スズメバチの動きが止まった瞬間、
 「エイ!悪いやつだ。あはは。」と笑いながら、一撃で敵を仕留める。温厚そうな外見に似合わず、奥さんは事もなげにスズメバチを退治してしまった。
 「すごいことになりましたね。」と、スタッフ一同大笑い。いつの時代も「母は強し」である。

 巣箱の見学が終わったところで、奥さんが今朝採れたばかりの「巣みつ」を持って来た。養蜂家以外には、めったに口に入ることのない無精製の巣みつは、濃厚で栄養満点だ。「一杯で三年長生きする」と言われ、体の免疫力を高める効果があるらしい。毎日食べているご主人は、ほとんど病気をすることもなく、八十五歳になった今でも、木に登れるという話だった。
 生まれて初めて食べる巣みつに、驚異の健康パワーをもらったロケ隊は、養蜂家夫婦に別れを告げ、予定より一時間遅れて、本来の目的地「きらきらの海」へ向けて、元気に自転車を走らせて行ったのだった。

 

(完)

 

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