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第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

生還 ~ありがとう蜂蜜~

みつこ

 

 「うわっ、雪崩だ!」
 スキーの早さより、雪崩のほうが数倍速い。逃げる私に雪崩が襲いかかる。私は雪崩に飲みこまれ、沢に押し出された。
 幸いなことに、崖から突き出た木の枝にリュックサックが引っ掛かり、転落をまぬがれた。「九死に一生を得るとはこのことか」
 でも、身動きが取れない。4時間かけてなんとか這い上がることができた。もし沢がなければ、雪崩に埋もれ、間違いなく命を落としていた。片方のスキーと、ポール2本、それと木の枝に引っ掛かったリュックサックが沢に流されてしまったが、おかげで命拾いした。
 私は北海道の山の中で生まれた。よく母に、産湯は裏山の沢だと言われ育った。野生のシカ、イノシシ、タヌキ、キツネ、ヒグマは、いつも当たり前のようにそばにいて、いまふうに言うと、共生していた。物心つく前から山に登り、山スキーをする活発な少女だった。
 いまでも、冬はスキーを担いで1800メートル級の山を登り、滑り降りてくる。いわゆるバックカントリースキーとは異なり、完全に山スキーである。
 今シーズンは、当初雪は少なかったが、年明けから急に積もりだした。
 そして、1月6日、山スキー中に雪崩に巻き込まれた。
 沢からなんとか脱出できたものの、吹雪で暗くなってきた。日没まで時間がない。私は下山をあきらめ、スキーをスコップ代わりに穴を掘ってビパークした。
 「とにかく体力を温存しなければ…でもリュックが流されたので食べ物が何もない」
 絶望感に打ちひしがれた。
 ふと、ポケットに手をやると、蜂蜜が入っていた。
 「やったー!」
 あまりのうれしさに、飛びはねて喜んだ。
 私は、小さなポリの蜂蜜を常備している。いつもはリュックサックに入れているのだが、たまたま滑る前にひと口なめたので、ポケットに入れたのである。
 ビパーク2日目、吹雪やまず体力温存のため、蜂蜜をなめながら、ひたすらじっとしていた。スマートフォンのバッテリーも切れて、天気予報も見ることができない。
 そして3日目、ようやく吹雪がおさまり、自力で下山。
 蜂蜜のみで、冬山で3日間生き延びたのである。蜂蜜が私を助けてくれた。
 「奇跡だ」

 蜂蜜は、私の命の恩人です。

 

(完)

 

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