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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

ハチミツを教えてくれたともだち

卯野咲

 

 私がハチミツを知ったのは、まだベビーカーに乗っていた頃だ。もちろん記憶にはないけれど、部屋に飾られている写真が代わりに覚えていてくれる。
 そこに写っているのは、お雛様の前に座っている幼い私と、私と同じくらいの大きさのくまのプーさんのぬいぐるみ。黄色いからだに赤い服を着たこの子こそが、私にハチミツというものを教えてくれた。
 母が言うには、この子は私が二歳の頃、家族でディズニーランドに行った時に買ったものらしい。私とプーさんが同じくらいの大きさだったから、二人抱っこしているみたいで帰りが大変だった、と前に言われたことがある。その子は大きいプーさんだったから“デカプー”と名付けた。当時の私に「ハチミツといえば?」と聞いたなら、間違いなく「プーさん!」と答えるだろう。
 その後私にはプーさんブームが訪れ、身の回りのものが少しずつプーさんで染まっていった。バスタオル、目覚まし時計、絵本……たぶん、小学校低学年頃までは続いていた記憶がある。その間にもう一体、デカプーより少し小さいプーさんのぬいぐるみもやってきて、その子はデカプーより小さいからという理由で“子プー”と名付けた。二体は私の枕元を陣取るようになった。大きすぎて一緒に寝ることは出来なかったけれど、そばにいてくれるだけで安心感があった。
 そんな私ももう二十一歳、大学三年生になった。子プーは数年前、いとこのお姉ちゃんが女の子を産んだときに、お父さんが絵本やおもちゃと一緒に渡してしまった。今も彼女の家で元気にしているだろうか……。
 デカプーはどうなったかって?
 デカプーは今も私の枕元に座っている。あれからぬいぐるみがたくさん増えて、泣く泣くお別れした子もいたけれど、デカプーだけはずっと部屋にいる。ぬいぐるみたちの最年長であり、部屋の長と言っても過言ではない。しかし、私が歳を取ったようにデカプーも歳を取った。日に焼けて全体的に薄くなった体には、いたるところに茶色いシミが浮かんでいる……いや、もしかしたらシミじゃなくてカビかもしれない。あの写真の中よりずっと汚くなってしまったけれど、今でも私はデカプーを手放せない。
 だってデカプーは、約20年の人生を一緒に過ごしてきた大事なともだちだから。デカプーとはまだ一緒にいたいし、そばにいてほしい。それはこの先私が何歳になっても、ずっと変わらないことだ。

 

(完)

 

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