林 建
私の母には、食事時に母が良いと思った物を食卓に出し続けるという癖がありました。それがまた奇天烈食材で、どこから何を聞いたらそうなるの?という物ばかりでした。
それはたとえば離乳食であったり(ちなみに私が小4の時に話です)、山盛りのパセリ(のみ)だったり、キンカン(の皮)だったり。
うちの母は、母が信頼する何かもしくは誰かから情報を得ると疑いなく信じ切ってしまうという性質があり、それ以外は何も目や耳に入らなくなってしまっていたようでした。出されているものは、体に悪いものではないのでしょうが、小学生の食卓に離乳食が乗るのは違和感でしかありませんし、パセリやキンカンの皮が、単体で山盛り乗ってる図は今思い出しても寒気がしますし、それ以前に当時は食べられたものではありませんでした。
そういえば、先日帰省した際も、チーズを食べると頭が賢くなる、という情報をどこかかから仕入れたらしく、私の子に鬼のようにチーズを勧めていました。なんとかなだめて、正月の食卓がチーズ祭りになるのを避けたものの、母の思い込みは健在という感じでした。
子供の頃、そんな感じで推進された食材(?)の中に、ローヤルゼリーがありました。ローヤルゼリー、なんておいしい響きでしょうか!
当時ローヤルゼリーの細かい情報は持っていませんでしたが、子供であっても、ローヤルの意味はわかります。王様が食べるゼリーだなんて!
それまでの離乳食や葉っぱや皮とは違います。きっと目が飛び出るほどおいしいに違いありません。
あまく濃厚な香りを想像して、口いっぱにほおばると、滑らかな舌触りと、芳醇な、ほうじゅんな…、
「おうぇぇえぇぇ」
猛烈な吐き気。なにこれ食べ物?
おふくろのちょいたし食材の中で、最も難敵になったのは言うまでもありません。
王様は王様でも蜂の王様が食べる食べ物だったんですね…。
以来、とってもあまーいハチミツを見ても、どうしてもこのローヤルゼリーの苦い(すっぱい?)思い出がよみがえってくるのでした。
そのおかげで、大きな病気もせずに、健康でいられているのは、言うまでもないのですけどね!
(完)
蜂蜜エッセイ一覧 =>
蜂蜜エッセイ
応募要項 =>
Copyright (C) 2011-2025 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.