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王子と蜂の子

うさみうな

 

 私が身を寄せている小さな会社には、イセさんという好青年がいる。いつも落ち着いていて正しい判断をし、問題があれば穏やかに物事を説明をしてくれる、まるで王子様のような方である。
 静かな話し方に柔らかな物腰、たまに笑いも混ぜながら主張には筋が通っている。彼の社内での信頼度は絶大で、仮に意見が分かれたとしても、イセさんが言うなら、とみんな納得をするのであった。
 ある午後、私は彼に、共通の知人であるオオサワさんから聞いた話をした。オオサワさんは植物学者で、国内はもちろん海外にまで出かけていっては植物の調査に当たっていた。
 「オオサワさん、タイでコオロギ食べたんだって。三角にパカっと開く厚紙でできた入れ物に、屋台で揚げたコオロギを入れてくれて、ポップコーン感覚でスナックとして食べるの。美味しいんだって」
 私は外国の未知なる文化に驚き、それを彼と共有しようとしていた。しかし彼は冷静であった。
 「それは美味しいでしょう」
 「え?」
 「はい?」
 「イセさんは昆虫食について抵抗感は無いタイプですか?」
 「揚げれば何でも美味しいでしょう。コオロギは食べたことはありませんが、昆虫食には抵抗無いですよ」
 王子には、食材の見た目など問題無いようで、私はそれに感心していた。
 「じゃあ、蜂の子とかも大丈夫ですか?」
 「ああ、蜂の子はね、美味しいんですよ。箸で一つ摘んで口に入れるでしょ。美味しいから、また一つ摘んで口に入れる。それでもっと食べたいから、また一つ摘む、とやっていると、美味しいからもっとたくさん食べたい、という気持ちがはやって箸の動きが間に合わないんですよ。思わず、スプーン下さい!って言いたくなります」
 なるほど。イセさんがそうおっしゃっるなら・・・。
 私の昆虫食へのハードルが下がった瞬間でありました。

 

(完)

 

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