滝本あやこ
私は中学生のころ、食べ物にはちみつをかけることがブームだった。しかし、どんな食べ物にもかけていたわけではない。ホットケーキやトースト、プレーンのヨーグルトくらいにしかかけていなかった。それなのに「ブーム」と言うのは、かける量が今より明らかに多かったからだ。
今はホットケーキを焼いても、チューブタイプのはちみつを二、三回回しかけるくらいだが、中学生のときの私は、ホットケーキ一枚に対して、お好み焼きにマヨネーズをかけるようにはちみつをかけていた。まずマーガリンを塗った後、縦にはちみつをかける。次に皿を九十度回転させ、横にもはちみつをかける。ホットケーキの表面から皿にはちみつが少し流れ落ちるくらいでかけるのをいったんやめる。半分くらいまでフォークで食べるのだ。もちろん、ほとんどはちみつの味だった。
半分まで食べると、残っているホットケーキの生地がはちみつを吸ってしまっている。だから私は追加ではちみつをかけてから、残った分を食べるのだ。今考えるだけでも甘すぎて胸焼けしそうだが、私は同じ食べ方で、もう一枚ホットケーキを食べていた。
これだけの量をかけていたのは、当時の私にとってはちみつの味が珍しかったからだと思う。なぜなら、中学生になる前の私は、メープルシロップをはちみつだと勘違いしていたからだ。私は小学生のころから、コンビニなどで売っているホットケーキをよく食べていた。ホットケーキにははちみつしかないと思い込んでいた私は、中に入っているメープルシロップをはちみつだと勘違いしていた。この勘違いに気づいたのは、中学生になってから後ろの原材料を読んだからだ。はちみつの文字がないことに衝撃を受けた。それと同時に、疑問が思い浮かんだ。はちみつの味とは、どんな味なのだろうか、と。甘いことは知っている。だからメープルシロップと勘違いしていた。はちみつの味を知っていれば、きっと間違えずに済んだのだ。
そこで、私は母に頼んではちみつを買ってもらい、ホットケーキにかけた。言わずもがな、はちみつブームの到来だ。初めて食べたアカシアのはちみつは、とてもおいしかったのだ。砂糖よりも控えめな自然な甘さと、なめらかな舌触りがとても魅力的に感じた。水あめに水を少し加えたような印象だった。スプーンにはちみつを出してみると、琥珀色だなと思いながら見とれた。私がはちみつをたくさんかけて食べていたのは、きっとそれ自体を食べたかったからなのだろう。
(完)
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