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ミツバチと共に90年――

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本のお供

あやのかじゅん

 

 私は朝が苦手です。しかし、一人暮らしを始めてからあるものに出会った私は朝を少しずつ起きられるようになりました。
 それは、はちみつ紅茶です。 
 私がその紅茶を初めて飲んだのは、友人宅にお邪魔したときです。
「美味しい紅茶があるんよ」
 昔から何でも完璧にこなす彼女が選んだ紅茶はどんなものだろう。でも、私なんかが頂いていいのだろうか。
 はいどうぞ、と出された焼き菓子は彼女の几帳面さが伺えるほどに綺麗に整列されていました。その逆に私はズボラで、几帳面とは反対にいるような人間なのです。だから、私は尊敬の意を込めて、少し大きな声で礼を言ったのでした。
 彼女が席に着くと、私がひしひしと感じていた疑問を投げかけてみました。
「あのさ、いつもどうやって起きてる?」
 唐突な質問に彼女は少し驚いて、慌てて質問の趣旨を付け足しました。朝はどれだけアラームをかけようと、早く寝ようと起きることができない、と。言って気づきましたが、自分のできないことを告白することがこんなにも恥ずかしいなんて。ましてや、完璧な彼女には軽蔑されるだろう。
 ですが、彼女はティーポットを手に取ってから微笑んで、
 「そんなの当たり前、私もできてないよ」
 私はしばらくあっけらかんとしていました。
 彼女の口から、できない、という言葉が出てきたことに。彼女は続けて、
 「でも、朝に楽しみを作ったらマシになったかな」
 朝に楽しみを作る?朝が楽しみなんて考えもしなかった。当たり前に憂鬱で、起きることは夢から現実に引き戻されるものなんだと。
「何でもいいんだよ。散歩に行くとか、珈琲を飲むとか、朝ご飯は豪華にするとか。初めは負担が少ないものの方がいいかもね。散歩に行くだと、服を着替えないと行けないし…」
 ティーカップに注ぎながら彼女は「飲んでみて」と視線で促しました。 
 一口飲んでビックリしました。色はストレートティーのようなのに口に広がるのは、はちみつの香りと甘さでした。
 「はちみつ紅茶って言ってね。スーパーで買えるの」
 私は、なんだか間の抜けたような気がして、ホッと息が漏れました。
 「読書好きだったよね。朝に好きな本とこの紅茶があれば起きられるんじゃない?」
 その日の帰り道。私ははちみつ紅茶が売っているスーパーに駆け込みました。そして、朝に読む本を近くに置いて、明日の朝を夢見ながら眠りにつくのでした。
 今日もはちみつ紅茶を片手に朝から作業をしています。今では、はちみつ紅茶は私の相棒となり、欠かせない楽しみとなったのです。

 

(完)

 

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