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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

一寸の虫にも五分の魂

れれれ

 

 中学生の時、私は人間関係に悩んで、拒食に陥った。そんな私は昆虫食に出会って、命の大切さを学んだ。
 中学3年生の時、所属していた演劇部を辞めた。原因は人間関係だった。10人あまりいる同期の演劇部員のうち1人が半年以上同期たちに無視されることが続いたのだ。苦言を呈した私も無視されるようになった。大好きな演劇を演劇以外の理由で辞めなければならなかったことは苦しい経験だった。一度は命を絶つことも考えた。何かに抗うかのように食事を取らなくなり、廊下をまっすぐ歩くのにもふらつくほどに当時の私は危うかった。
 そんな時、見かねた同級生が「だったら生物部に来たら?」と誘ってくれた。藁にも縋る思いで入部した。生物部は自分で好きなテーマを定め、それぞれで研究する部活である。
 私は、もともと好きだった昆虫の研究をするつもりだったが、昆虫食の可能性を紹介する新聞記事に心を奪われた。昆虫食は栄養効率が良く、食糧問題の解決の糸口になると紹介されていたのだ。身近に感じていた昆虫がまさか食べられるなんて…。しかも大きな可能性を秘めている。どんな味なのかぜひ食べてみたいと思った。さっそく同期の部員たちを誘い、皆で昆虫食のワークショップに参加した。提供されたのは素揚げのセミやミルワームなど12種類。昆虫が好きな私でさえも始めは大きな抵抗を感じたが、参加者たちが口に入れているのを見て、自分も覚悟を決めて口に入れてみる。食べてみると意外に美味しかった。中でも、オオスズメバチの巣を駆除する際に捕まえたハチノコが気に入った。
 オオスズメバチは百田尚樹作の小説「風の中のマリア」の題材となったハチで、私の最も好きな昆虫の1つである。働きバチは自分の妹にあたる幼虫に食べさせるため、バッタやイモムシなどを捕まえに狩りに出る。メスの社会で組織のために身を粉にする姿は、女子校で人間関係に悩んで孤立した私にとって憧れだった。とはいえ、オオスズメバチは人間にとっては害虫。刺されると死に至ることもある。そんなオオスズメバチのハチノコが優しい甘みと滑らかな口当たりだったのだ。これまで人間への脅威としか感じてこなかったオオスズメバチが自分の栄養の糧になっているというのは不思議な感覚だった。
 思えば、これまで食べてきた肉や魚はどのようにして食卓に出されるのか、目を背けている部分があった。しかし、自分にとって身近な昆虫を食べるのは自然との繋がりを感じられた。一寸の虫にも五分の魂というが、昆虫を食べたことが命の大切さを考えるきっかけになったのだ。昆虫食に出会ってから、私は拒食を克服し日々の食事に感謝しながら生きている。

 

(完)

 

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