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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

忘れられない思い出

三燈

 

 小学生の時、英語教室に通っていた。この英語教室では毎年発表会があった。この発表では短い劇を英語で行うことが恒例となっていて私も例年通り劇をやることになった。劇は私と友達二人の三人で行い、本番まで毎日必死に練習した。
 本番当日。大きな会場に目を奪われながら人の波を掻き分け友達たちのところへ行き会場に入った。リハーサルを終えて緊張からか何度もトイレに行った。実は、大勢の前で発表することを今までに経験したことがなかった私は極度の緊張状態だった。そのためリハーサルの時にうまく声を出せなかったり噛んでしまったりして仲間や先生に心配されてしまった。
 トイレで「本番も緊張で失敗してしまうのではないか。」
 そんなネガティブなことを考えながらトイレを出ると、母が待っていた。客席にいるはずでは、と疑問に思いながらも母の方に向かっていくと手には大きな飴を持っていた。
 「大丈夫。きっとうまくいく」そう声をかけてくれた母は包装を剥き私に飴を差し出した。その大きな飴を受け取り口の中に入れると強烈な甘みが舌を刺激し、一瞬の驚きの後にほんのりとした甘い匂いが体を緊張から解き、喉の渇きを潤してくれた。母がくれた飴の包装紙にはマヌカハニーと書いてあった。私が元々好きなハチミツの飴だと気づき母の気遣いに感謝した。飴を舐めているうちにだんだんと緊張で荒れていた心に落ち着きが戻ってきた。飴を食べ終わる頃にはいつもの自分を取り戻して、本番の舞台を想像して集中していた。
 トイレから帰り舞台の袖に戻った。リハーサルの時の私を見ていた仲間や先生はトイレから帰ってきた私を見て明らかに安堵した顔をしていた。先生や友達に声をかけられながら本番の舞台に向かった。
 舞台に上がり本番が始まると、リハーサルの時とは全く違う練習以上のことができ、とても楽しかった。本番が終わると仲間や先生と発表会がうまく行ったことを喜び合った。
 審査を終えて優勝や優秀賞などの賞は取れなかったが私の中の最優秀賞であり今でも思い出すくらい良い思い出になっている。
 この日から私はマヌカハニーの飴が大好物になり何か大事な時や緊張する場面では必ずあのマヌカハニーの飴を持ち歩くようになった。きっと母があの時、飴をくれなかったら私はあのまま本番も失敗して苦い思い出になっていただろう。あの時の母のナイスアシストと緊張をほぐしてくれた飴には今も感謝している。いつも助けてくれるあの飴は私だけの魔法の飴であり、特別な思い出を作ってくれた大切な宝物だ。

 

(完)

 

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