茶柱人称
私とはちみつとの出会いは、よく覚えていない。なぜなら、物心ついたときにはすでに、パンに塗って食べるのが習慣だったからだ。はちみつと出会った瞬間というのは、明確には記憶していない。
だが、中学生のときだっただろうか。普段の通り、私は朝食のトーストを食べていた。何気なく、「はちみつ美味しいね」みたいなことを言ったのだと思う。
そうしたら、親はこう言った。
「それ、オリゴ糖だよ」
衝撃だった。毎朝パンにかけていたものが、実ははちみつではなくオリゴ糖だったのだ。ずっとはちみつだと思っていたのに。
聞けば、昔はたしかにはちみつをかけていたが、いつからか、はちみつは高いからと、買わなくなっていたらしい。当時、私は朝食の用意を全て親にしてもらっていたから、言われるまで気づかなかったのだ。
私はそこで、はちみつが高いものである(少なくともオリゴ糖より高い)ことを初めて知った。
後日、親がはちみつを買ってきた。そしてある日の朝、パンに塗ってあると言った。本物のはちみつだと思って、私はウキウキした。どんなものだろうと、口にする。
香り。一番に感じた違いは香りだった。普段食べていたオリゴ糖よりも、段違いに香りがあった。それに、甘みの中にも、もっと複雑な味がするような気がした。
はちみつとオリゴ糖。二つは似たような容器に入った、似たような食べ物だが、たしかに違いがある。私はそれを、中学生のときに知ったのだ。
(完)
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