はちみつ家 > 蜂蜜エッセイ

ミツバチと共に90年――

信州須坂 鈴木養蜂場

はちみつ家

Suzuki Bee Keeping

サイトマップ RSSフィード
〒382-0082 長野県須坂市大字須坂222-3

 

蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜を切らして

明香音

 

 毎朝、ヨーグルトにたっぷりの蜂蜜をかけて食べている。しかしその日は、うっかり蜂蜜を切らしてしまった。何気なく食べていた蜂蜜なのに、いざなくなるととても寂しい。蜂蜜の代わりになるものさがしを始めると、蜂蜜の記憶が自然と思い出された。
 
 高校生のとき、私は合唱部に入っていた。朝、昼、放課後、と空いている時間は全て練習に費やした青春時代。鞄の中には蜂蜜を入れて持ち歩いていた。蜂蜜は喉にいいんだよ、と誰かが教えてくれたからだ。歌う前にとろりと蜂蜜を喉に直に垂らすと、蜂蜜のように密度の濃い、透き通った歌声が出るように感じた。そういえば、蜂蜜はお守りみたいなものだったな。
 
 我が家の食卓では、ご褒美に大学芋が並ぶことが時たまあった。テストで良い点が取れたときだけでなく、運動会で三位だったときや大会で予選敗退をしたときにも出てきた。だから、母親が大学芋を作るのは自分が一生懸命頑張ったときなんだな、となんとなく分かっていた。私はさつまいもにかかった飴色のとろとろが大好きだったが、その正体が蜂蜜だと知ったのは自分で料理をするようになってからだ。何回作っても母親の作るあのとろとろには敵わないんだよなあ。
 
 私は小さい頃から風邪を引くことが多かった。気温の変化に弱く、最低でも一シーズンに一回くらいのペースで罹った。しかし、いつだったか近所のおばさんがおすそ分けにくれた蜂蜜かりんを食べたら、つらい風邪が次の日にはすっかり治ってしまったことがあった。あれから風邪の引きはじめには必ず蜂蜜かりん飴を買う習慣ができたんだっけ。
 
 ……頑張るとき、頑張ったとき、頑張れないとき。蜂蜜がいつも一緒だったことをあやうく忘れるところだった。社会人になった私は慣れない仕事に毎日押し潰されそうになっている。泣きたい時だってたくさんある。でも、大丈夫。蜂蜜がそっと支えてくれているから。私は、何もかけないでヨーグルトを食べ始めた。

 

(完)

 

蜂蜜エッセイ一覧 =>

 

蜂蜜エッセイ

応募要項 =>

 

はちみつ家メニュー

Copyright (C) 2011-2018 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.