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ミツバチと共に90年――

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蜜の味

青山 昌代

 

 私の母は江戸っ子だ。信州人の父と出会って、嫁いできた。
 それなのに、蜂の子を「おいしく」食べたことがある。すごいなあと思う。私は信州人だけれど、ゲテモノぐいはできない(蜂の子が、いわゆるゲテモノに入るのかどうかもわからないけれども)。遠い昔、イナゴの佃煮をたぶん食べたことがあるなあ、というくらいだ。
 「名人の人達がいてね。その人達がとってきてくれた、新鮮なものを食べたのよ。甘くておいしかったねえ」
 そう母は言うのだ。
 甘いんだね。蜂の子だけに。食べられない私だけれど、それでも想像はつく。甘さを想像の中だけで味わう。様々な花の蜜の味、おひさまの匂い、土のあたたかさ、透き通った風の佇まい・・いろんなものがきっとぎゅっと詰まった味わいなのだろう。 
 想像の中だけで味わうのは、蜂の子だけではない。「養蜂家」についても、思いを巡らせてしまうのだ。恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』を読んで以来、養蜂家って素敵だなあと思うようになった。
 蜜蜂と共に旅をしながら生きることは、自由で軽やかな感じがする。羽音のブンブンを子守唄にし、あたたかな春の日差しを毛布がわりにして眠るのだろうか。
 勝手な想像は、私を甘い気持ちにさせるけれど、想像と現実は全く違うであろうということもわかっている。現実の養蜂家としての暮らしは、そんなふわふわしたものとはむしろ対極にあるような・・もっと地に足がついたようなものだろう。
 蜂の子も食べられず、養蜂家にもなれない私は、現実世界で、蜂蜜を食べる。トーストに塗ったり、ヨーグルトに垂らしたり。ねっとりとした幸せがひろがる。
 現実は、想像よりずいぶん甘い。

 

(完)

 

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