虹のじゅもん
三十代半ば、ストレスから体調を崩しがちな私に、職場の先輩女性が手製のはちみつ梅を持ってきてくれた。
「…はちみつ梅? 何に効くんですか?」
「もう、あなたは考えすぎなの、はちみつも梅も体にいいものだし、古くから伝わって今も作られ続けているんだから、いいに決まっているの」
「はあ…」
プラシーボ効果みたいなものかな、と心の中で思いつつ、一つつまんだ。梅なのに甘くて何か不思議な味がした。
「体がずうんと調子よくなった気がするでしょ」
「かな?」
「少しずつ食べなさい」
体にいいものならなんでも試したかったのでありがたく、一瓶いただいて帰り、それから大事に少しずついただいた。そのまま食べたり、エキスを水や炭酸で割ったりして飲んだ。
体に良いのかどうかわからなかったが、だんだんおいしくなって、それがなければ朝がはじまらないな、と思い始めたころ、梅の出回る季節になった。
「はちみつ梅を作ろうと思って」
と先輩女性に言うと、作り方を教えてくれた。
「洗った梅をはちみつにつけるだけだから、あなたでもできるから」
「はちみつは何が?」
「手に入りやすくてお手頃値段のもの」
さっそく言われた通りに作ってみた。
一か月ほどでおいしいはちみつ梅ができあがった。
それから時が過ぎ、先輩女性が今どうしているかわからないが、毎年はちみつ梅をつけ、今度は私が皆に
「とにかく食べなさい」
と、押し付けている。
(完)
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