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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜のご縁

Kazna

 

 「ただいまー。いい物買ってきちゃった」
 玄関から聞こえる娘の声が弾む。
 「お帰り。なになに?何買ったの?」
 「塾の帰りに偶然駅で見つけたんだけど、これ」
 差し出す娘の手にはお洒落な箱。えーなんだろう。そっと開けてみると、二つの小瓶が並んで収まっている。蜂蜜!そう、それは娘が受験しようとしていた大学で取れた蜂蜜だった。その大学では養蜂を研究しており、大学のキャンパスでミツバチを飼育しているそうだ。大学で採取された蜂蜜だけを使い、すべての生産工程を学内で行っているという。知る人ぞ知る大学ブランドの蜂蜜なのだ。同封されているしおりを読むと、季節によって味わいが違うと書いてある。今回手にした蜂蜜は5月と6月のものだった。どんな味か想像しながらわくわくした。
 翌朝、早速5月の蜂蜜をトーストにつけて食べた。さっぱりとしていて食べやすい。美味しい!小瓶を持ち上げると、窓から差し込む朝日が蜂蜜を照らした。透明感を増した蜂蜜はキラキラと輝いた。娘と私は蜂蜜を味わいながら、ここの大学受かるといいねえ、なんて会話した。とても穏やかな時間だった。
 それから、その蜂蜜と受験期を共に過ごすことになる。パンの他にもヨーグルトやパンケーキ、スコーンなどに合わせ、息抜きの時間を楽しんだ。一方、受験生の1年はあっという間で、瞬く間に冬がやって来た。コロナ禍の受験は思った以上に気を遣った。蜂蜜で冬の乾燥した喉を潤しながら娘は勉強、私はサポートに徹した。
 いよいよ1月、共通テストが始まった。2月には私立受験。いくつか合格をもらい、残すは国立2次。蜂蜜の大学の試験だ。最難関学部に挑む娘は緊張の2日間を無事終えた。高校の卒業式を挟み、合格発表の日までが長く感じられた。当日は時間ぴったりにスマホで合格発表のページにアクセスした。何度か味わった合格発表の瞬間も今回で最後。行く大学が決まる瞬間だ。
 「あった!」
 自分の番号を見つけ、娘の顔が一気にほころぶ。私は大きく安堵した。
 大学に入学してから、娘は学内のショップであの蜂蜜を買ってきた。
 「あったよ、同じの。これからはいつでも買えるね」
 「また違う時期の蜂蜜も買ってきてね」
 こんな会話が待っているなんて1年前には想像もしなかった。私はテーブルに置いた蜂蜜の小瓶を見つめ、思わず目を細めた。

 

(完)

 

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