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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

ハニー少年

カブトムシ

 

 子供時代、私は虫網を持ってウロウロする普通の昆虫少年であった。夏休みは毎日のように近くの森に入りチョウ、トンボ、セミ、カブトムシを捕り、宿題の自由研究は毎回昆虫標本を提出した。おかげで標本の腕前はずいぶん上達した。
 プラスチック製の虫カゴの格子の幅加減や見栄えの良さもあって捕らえる虫は大型に限られていたが、次第に好みは蜂族に移っていた。花や樹に集まる蜂の洗練された美しいフォルムや優れた飛行能力に魅せられたのだ。持っていた昆虫図鑑の【ハチ、アリの仲間】のページはボロボロになった。飛ぶ姿だけで蜜蜂かハナアブかすぐにわかったし、知らない蜂を捕まえてはその名を覚えて喜んでいた。
 やがて好きが高じて身近で蜜蜂を飼いたいと、30年ほど前には兵庫県の養蜂家の元に住み込み、1カ月限定だったが蜜蜂の飼育に従事したことがある。実家が小学校の隣だったので蜂が学童を襲えば困ると考え、残念ながら飼育は断念した。
 ただ蜂蜜はそれ以来、手元に置いている。嗜好飲料に甘味が欲しい場合はほぼ蜂蜜。30年前に耳元で聞いたあの羽音で懸命に集めた花の蜜を体内で変化させた蜂蜜。それだけでとても有り難く思うのだ。
 蜜蜂が体内酵素で生成する加工品に蜜ロウがあることもその時に知った。蜜蜂が蜂蜜を変化させた蜜ロウは巣を作る材料になるが、防水効果があるため集めた蜜が巣房から浸み出さないのだと教えてもらった。同じようなハニカム構造の巣を作るスズメバチは蜜ロウを作れないので花の蜜を集められないのだ。
 時々飛んでいるスズメバチを見る。私はそのたび大昔の原始蜜蜂もさぞかし大型で凶暴、勇ましく飛び回っていただろうと想像してしまう。先人にとって蜂蜜採りは危険なイベントで猛烈な蜂毒攻撃を受けたはず。だがそれでも諦めずに立ち向かい、より容易に蜂蜜を得る方法を探り続けたのだ。魅力のある食品だったのだろう。蜂蜜は先人たちの勇気と工夫が結集した宝物だと思う。
 疲れた時はホットミルクに多めの蜂蜜を入れる。花蜜の種類にこだわりはない。レンゲでもミカンでも百花蜜でも良いのだ。ホットミルクを飲めば〝大丈夫だよ〟とささやく声が聞こえてくるようでなぜか安心する。私はミルクに溶け込んだハニートラップのような甘く芳醇な蜜蜂の声に元気をもらっている。

 

(完)

 

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