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蜂蜜エッセイ応募作品

はちみつたっぷりのオートミール

飴園 リナ

 

 大学時代、アメリカに一年間留学した時に食べたもので美味しかったものは色々ある。だが、その中でもダントツで一番だと思うのは、『たっぷりのはちみつがかかった温かいオートミール』だ。私が初めてそれを口にしたのは、ホームステイが始まって数日もしないうちに、体調不良で寝込んでしまった時だった。
 丸三日間、ベッドから起き上がれなくなり、白湯を飲んでも吐いてしまう状態が続いた。体が辛い以上に、ホストファミリーになってくれた老夫婦に、着いて早々心配をかけてしまっていることが辛く、肩身が狭かった。
 ようやく熱も下がり体調が落ちついてくると、忘れていた空腹感が少しずつ戻ってきた。日本だったらこんな時には「お粥」が定番だが、ホームステイしている家にお米はなかった。アメリカではこんな時、何を食べるのだろうとぼんやり考えていると、ホストマザーが遠慮がちにドアをノックして入ってきて、丸いボウルを差し出してきた。ボウルの中には、何やら白いものが温かそうに湯気を立てている。
 「元気が出るように、ブラックベリーのはちみつをたっぷりかけてきたのだけど、気に入るかしら?」
 オートミール? 言葉は知っていても食べるのは初めてだった。おそるおそるボウルをのぞきこんでみると、それはまさにお粥そっくりだった。ひとさじすくって口に運んでみる。最初に舌に感じたのは、はちみつの濃い甘さで、あとからじんわりとオートミールの素朴な味が広がった。不思議なことに、オートミールというものはその時初めて食べたのに、何だかひどく懐かしい味に思えて、心細かった私の心まで慰められるような気がした。
 「すごく美味しい」と私が言うと、ホストマザーは心底ホッとしたような笑顔になって、私の肩をギュッと抱きしめてくれた。
 はちみつたっぷりのオートミールのおかげで、ほどなく完全回復した私は、すぐにハンバーガーでもピザでも、もりもり食べられるようになり、その後は帰国するまで体調を崩すこともなく順調に体重を増やし続けた。ホストマザーは、それからもしばしば、私が喜ぶからと、朝食にはちみつとオートミールを用意してくれた。
 それ以来、「アメリカで食べたもので一番すきなものは何?」と聞かれるたび、私は少しも迷うことなく「たっぷりはちみつをかけたオートミール!」と答えている。

 

(完)

 

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