石橋 久実子
数年前、たまたま見ていた動物関連のテレビ番組で日本ミツバチが特集されていた。もう五十年以上日本で日本人として暮らしてきたというのに、私は日本ミツバチという在来種のミツバチが存在することを全く知らなかった。驚き興味を引かれて、テレビに見入った。
番組の中で日本ミツバチの巣は山中の木の根元の空間にあった。都会で生まれ育った私には、自然豊かな所に暮らす日本ミツバチを見て知る機会がなかったのだ。日本ミツバチは西洋ミツバチより体も小さく色彩も地味だ。
ハチの腹部の特徴である黄色とこげ茶の縞模様の黄色の部分の色が濃く、茶との境目がはっきりしない。もし見たことがあっても、私 はハチだと気づかなかったのかもしれない。
番組を見て日本ミツバチの習性や特徴を知ることができた。私が知らなかったように、日本で日本ミツバチの知名度は低い。それはハチミツの採取量が西洋ミツバチよりずっと少ないため、市場に出回らないことも一つの原因だそうだ。確かに一般的なスーパーで、日本ミツバチのハチミツが売られているのを見たことがない。
また、日本ミツバチを飼うのは難しいそうだ。巣の環境が悪いとどこかに行ってしまう逃亡癖があるという。意志がはっきりしていて人間のようで親近感を持った。
番組で一番驚いたのは、巣を狙って偵察に来た一匹のスズメバチを大勢の日本ミツバチが覆い、スズメバチの体温を上げることで殺してしまったことだ。西洋ミツバチにはできないことだそうだ。スズメバチの種類が外国より多い日本で長く暮らしてきたからこそ、スズメバチへの有効な攻撃方法を自然と学んだのだろう。
番組がきっかけで興味を持った、日本ミツバチのハチミツを旅行先の高知で買うことができた。甘みが穏やかで少し酸味があり、以前買った日本産の西洋ミツバチの百花蜜のような複雑で奥行のある味わいだった。
我が家にはオリーブの木がある。去年はたまたま家にあった、外国産のハチミツで実のハチミツ漬けを作った。希少で高価なハチミツで贅沢だが、今年は日本ミツバチのハチミツで作ってみたいと思っている。我が家のオリーブの実と日本で咲いている花々からのハチミツ。ともに日本の土が生み出す恵みの組み合わせは、きっと滋味深い味わいになるだろうと今から楽しみにしている。
(完)
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