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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

父とハチさんの思い出

山口 修

 

 家内が買ってきた瓶詰の蜂蜜を見ていると戦後まもない頃のことが懐かしく思い出された。食糧事情の悪いなか8人の子沢山の我が家、子供には甘いものを少しでも多く食べさせたいと思ったのか父は庭先でミツバチの飼育を始めた。最初は巣箱1つから始まり数年たった時は十数個にも増えていた。
 毎年3月の半ば雪が解け若芽が出始めるころ、玄関の三和土に置かれたむしろ巻の巣箱を庭先に運び出した。比較的暖かい日が続くとハチ達はブンブンと蜜集めを始める。その年の最初にとれる蜜はレンゲだったと思う。とろりと粘度が高く一番の私好みだった。そのあと1~2回採蜜し、終わりはさらっとした感じの柿の花の蜜だ。夏から秋にかけて集まった蜜は冬に備えるハチさんのものと教えられた。
 半月に1度位の割で日曜日は朝から家族総出で蜜をとる。採蜜の道具は、藁を焚いて蜂をおとなしくさせる煙だし(燻煙器)と遠心分離機、巣ひからハチを払い落とす刷毛と刺されないための蚊帳の切れ端で作った覆いだ。蜜で満杯になりずっしりと重い巣ひから蜜蓋を包丁で切り取るのは父の役目、時には白っぽい蜜蝋を見つけロイヤルゼリーだと喜ぶ父がいた、健康に良いというだけで何のことか分らなかったが。そして採蜜の日の夕食に決まって登場したのが醤油炒めしたハチの子、父以外は家族の誰も箸をつけなかった。
 長野駅から歩いて十分くらいの場所、ハチさんもよくあれだけの蜜を集められたと改めてハチさんお疲れさまと言いたい。 時には刺されもしたが命と引き換えで私を刺したのだからこちらに落ち度があったのだろう。
 今では考えられない懐かしい思い出だ。

 

(完)

 

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