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蜂蜜エッセイ応募作品

マッチ箱の中には

鈴木 恵子

 

 小学校卒業までの2年半を私は島根県の山村で祖父と暮らしてた。祖父は竹ぼうきを作ることをなりわいとしていた。いつも裏のの小屋で作業していた。
 竹の柄に枝を巻きつけ、それを針金でしばっていく。祖父手作りの巻きつけ機が活躍していた。私はその作業を見るのが好きだった。
 寒い時期には、土間の一角で火を焚いていた。仕事が終わる夕方になると、いつ入れたのか、灰の中から真っ黒になったさつまいもや栗をかき出して、軍手の手で弾ませながら私のスカートに乗せてくれた。
 私は「いけーん。スカートがよごれーがあ」と言って祖父の手にもどす。祖父はさつまいもは半分に折って、栗は皮をむいて今度は私の手に持たせてくれる。寒い季節の夕方の楽しみだった。
 ある時、灰の中からマッチ箱のようなものが出てきた。祖父は黒く焦げた箱を開けると、中の白くて黄色くてなが丸の物を私に見せてくれた。
 「なに、これ」
 「蜂の子だで」
 祖父はそれをつまんで口に入れた。私も真似をした。なんの躊躇もなかった。いつものさつまいもや栗と同じだった。祖父のくれるものはおいしいに決まっている。初めて食べた蜂の子は、熱くてホクホクして香ばしかった。
 小学校卒業後、私は東京に住む両親の元に戻った。もう蜂の子も真っ黒なさつまいもも栗も食べることはなかった。

 

(完)

 

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