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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

主役は蜂蜜

馬渕 智子

 

 数年に一度、無性に食べたくなるものがある。それは、老舗菓子店の喫茶室で味わえるホットケーキだ。昭和四十年前半、銀紙に包まれた四角いバターと小さなミルクピッチャーに入れられた蜂蜜、そして表面がこんがり焼かれた二段重ねのホットケーキ。十字にナイフを入れ、更に斜めに切れ目を入れて、一口目は、ほんの少しバターをナイフにとって、ホットケーキに塗りほおばる。それを繰り返し、2枚目に差しかかる頃、黄金色した蜂蜜を少しだけ、ホットケーキにかけて食べる。バターと蜂蜜のハーモニーは絶大。最後は、バターと蜂蜜をすべて使い切るようにかけて食べ、その味は今でも表現のできない美味である。あの頃の蜂蜜は、幼い私にとって高価でめったに口にすることのできないものだった。
 大人になり、子供の頃のように甘いものや果物には興味がなくなり、甘党から辛党へ。
 コーヒーが好きになり、普段はブラックで飲んでいたのだが、気分次第でミルクを入れ、味わっていた。そんなある日、頂いた蜂蜜を、スプーンに半分ほど入れて飲んでみた。インスタントコーヒーだが、えぐみはあるもののコーヒー本来の苦みを感じ、「美味い」と思わず感激。しばらくの間は、蜂蜜入りでコーヒーを飲んだ。
 ふと、子供の頃食べたホットケーキとコーヒーが飲みたくなり、馴染みの喫茶室へ。昔と違い柔らかいバターがたっぷりつき、大きなミルクピッチャーに蜂蜜がたっぷり。すべて食べきった後、サービスのコーヒーに蜂蜜を入れて飲んだ。コーヒー自体の味が引き立ち、本当に美味しく、とりこになった。
 それから数年。また、あの食後のコーヒーが飲みたくなり、お店に行き、ホットケーキとコーヒーを注文。バターと共に運ばれてきたものは、蜂蜜ではなくメープルシロップ。いつの間にか、シロップが変わっていたのだ。食後のコーヒーに、少しずつ余ったシロップを入れ飲む。入れ方が足りないのかと思い、更にシロップを足して飲む。
 「甘い。甘すぎる」。最後はコーヒーがまるで砂糖水状態。もったいないので、飲み干して帰って来た。私は、コーヒー豆のえぐみを感じても、本来の香りや味を楽しみたかったのだと、初めて気づいた。これからは、上質な蜂蜜で、我が家でコーヒーを楽しもうと思った。

 

(完)

 

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