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蜂蜜エッセイ応募作品

ハニーミルクラテ

瀬璃

 

 親友に彼氏ができた日の帰り道だった。最寄り駅に新しくできたカフェに立ち寄り、カフェラテでも飲もうと思ったのだ。メニューを見て、カフェラテの表記を探す。あったあった。メニュー上の「カフェラテ」という表記を指さしながら「これ」と店員さんに言おうとして、止めた。そのすぐ下に「ハニーミルクラテ」という表記を見つけたからだ。ハニーミルクラテ、なんとも甘ったるそうな名前である。元より甘いものがあまり得意ではないため、いつものようにスルーしようとしたのだが、なぜか咄嗟に「ハニーミルクラテ一つ、アイスで」と注文してしまった。
 自分の奇行に焦りながら、出てきたハニーミルクラテのアイスを受け取った。赤いストローがこれ以上ない存在感を醸し出している。先ほども申し上げたが、甘党からかけ離れている私がハニーミルクラテの一口目を含むのは少々勇気のいることで、一旦深呼吸が必要だった。人知れず緊張しながら一思いにラテを吸い込む。口の中に広がるラテの苦み、ミルクの優しさに隠れきれずにいきなりはちみつがドロ…と流れ込んできた。独特の甘さが舌にのる。そういえば商品を受け取る際、店員さんが「よく混ぜてお召し上がりください」って言ってたっけ。溶けていないはちみつはラテの苦さに調和することなく底にたまっている。
 幼馴染と同じ高校を選んだのは私だ。高校に入って、私には親友が出来て、よく3人でいるようになった。親友はいつの間にか私の幼馴染を好きになっていた。私はその様子に気づいていたけれど、幼馴染という関係に甘えて、彼は私を選んでくれると謎の自信に満ちていた。
 今日は親友の誕生日で、3人で遊園地に遊びに行って来た。ジェットコースターやコーヒーカップを乗り回して、最後は観覧車だけになったところで幼馴染が想いを私だけに告げてくれた。
 「二人きりで観覧車に乗って、告白したいんだ。協力してくれ」
 きざなことをするようになったなあ、と思いながら、はちみつの溶けていない冷たいハニーミルクラテを飲む。つん、と目の奥が刺激されて、私は頬に涙が伝っているのに気付いた。ああ私、失恋したんだ。はちみつの甘さとドロドロした感覚がようやく恋の終わりに気づかせて、嗚咽を抑えるようにストローを底から少し浮かせてラテを口に含んだ。ちゃんと混ぜればよかった。ちゃんと好きって言えばよかった。今更後悔しても遅いとわかっていても、私の方がきっとずっと好きだった。
 今ごろ二人は楽しく過ごせているだろうか。溶けていないはちみつは言えなかった想いと一緒に、甘党になれない私の体内で消化されていった。

 

(完)

 

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