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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

女王蜂の思い出

芝宮 淳

 

 私が幼かった頃、父が趣味でミツバチを飼っていた。
 季節は初夏の頃だろうか。ハチが増えてきたから分かれるかもしれない、女王蜂が巣から出てくるかもしれないと、父がいっていたことがあった。
 それから間もない、ある日の夕食前、母と居間でテレビを見ていたら、一匹の大きなハチが迷い込んできた。いつも見慣れているミツバチとは明らかに違っていたが、私と母は、これが父のいっていた女王蜂に違いないと思った。逃げられては大変と、まず部屋の窓を閉め、扉を閉めた。ハチは部屋の中をブンブンと飛び回っている。さて、どうやって捕まえようか?虫取り網はないし、虫かごもない。大事な女王蜂だから、捕まえるときにけがをさせたり、殺してしまっては何にもならない。と、そのうち、ハチは蛍光灯の光に誘われたのか、蛍光灯にぶつかりだした。あたるたびにジャジャンと音がする。しばらくするとスイッチのひもに留まって静かになった。
 母は、今がチャンスと、ビニール袋を広げ、そうっと下からひもごとハチを包み込んだ。ハチは袋の中でブンブンうなっていたが、父が帰ってくるまではほっといても死なないだろうと、袋の口を軽く結んでおいた。私と母は、女王蜂を無事捕まえることができてよかったと、楽しみに父の帰りを待った。
 夜になって、父が帰ってきた。母と一緒に女王蜂を捕まえたことを告げ、袋の中のハチを見せると、
 「わあっ、これはスズメバチだ。よくさされなかったなあ」
 と、新聞紙でたたいて、そのまま丸めてごみ箱に捨ててしまった。
 そのとき私は、なんだ違ったのかと、少しがっかりしただけであった。
 スズメバチを知った今では、このことを思い出す度に、よく捕まえられたものだと怖くなる。

 

(完)

 

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