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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

押しかけおじさんの笑顔

伊若 杏

 

 「ぶんぶんぶん、はちがとぶー」
 映画『ホーム・アローン』の間抜けな泥棒二人組に似たおじさん達が、網とはしごを持って、歌いながら家をウロウロしていました。
 二人は、突然やって来ました。
 昼過ぎに、子ども達を寝かしていた時、玄関のチャイムが何回も鳴り、「奥さん、いますか?奥さん、奥さーん」と大きな声が聞こえてきました。子ども達が起きてしまい、しつこい営業だと腹をたて私は玄関戸を開けました。そこには、頭にタオルを巻き、作業着姿の二人のおじさんが立っていました。
 「何ですか?」と私が不機嫌に言うと、
 「奥さん、この家ん中に蜂が巣を作っとるよ」とひとりが言いました。家の前に、『○○シロアリ』と書いた白い車が停まっていました。
 「俺ら、蜂の駆除をした帰りなんやけど、蜂がようけ飛んどると思って後を付けてきたら、この家に入りよったんよ。数が多いし、巣ができとるはずやで」
 初めは悪徳商法かと疑いましたが、確かに最近、室内に蜂がよく入ってきていました。子どもが刺されては大変だと思い、まだ疑いながらも「確かめるだけなら」と家の中を見てもらうことにしました。
 おじさん達は歌いながら、家の様子を見て、「こっちや」と二階の天井を指さし私を呼びました。
 天井裏を覘くと、羽音が聞こえ、暗がりに目を凝らすと、梁にびっしりと蜂が群がっているのが見えました。
 「こいつらは蜜蜂やから、蜂蜜分けてもろうたら作業代は千円でええわ」と言われ、「えっ?」と思いましたが、了承するとすぐに作業が始まりました。
 蜂を袋に追い込み、梁に付いた巣をナイフで剥がしていきます。
 「大きな入れ物もってきてー」と言われボールを渡すと、
 「純正蜂蜜や、おいしいで。ガーゼは、さら(新しい)やから、安心して食べていいで」と、ガーゼでくるんだ蜂の巣を渡されました。ガーゼからは、透明の金色の蜜が滴り落ちていました。
 作業中、おじさん二人はずっと歌っていました。天井裏の蜂はいなくなり、巣が残っていないことを確認して、薬を散布し作業が終わりました。
 「ほんまに千円でいいんですか?」と渡しながら聞くと、
 「蜂蜜分けてもろうたし、蜜蜂は知り合いに渡すわ。こっちがお金を払わなあかんくらいや」と笑って帰っていきました。
 蜂蜜を舐めてみると、とてもおいしく初めて食べるサラッとした甘さで、庭の花と同じ匂いがしました。。
 「ぶんぶんぶん、はちがとぶー」の歌を聞くと、あの時のおじさん達と蜂蜜の味を懐かしく思い出します。

 

(完)

 

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