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蜂蜜エッセイ応募作品

甘酸っぱい恋の味

藤野月

 

 私は、毎年春になると苺蜂蜜シロップを作っています。作り始めた理由は淡い片思い。あの人に飲ませてあげたいな、そう思って作っています。今も恋は実らないけど、私の生活は家族を囲んだ手料理で彩り豊かになっていきました。
 作り方は簡単。苺を優しく洗って、ヘタをとって、水気をきって、保存容器に入れて蜂蜜をかけるだけ。常温で保存できます。美味しくなるのは1年後。3年間熟成したのは更に美味しい。
 シロップを冷たいソーダで割ると、ふわっと苺と蜂蜜の甘酸っぱい香りがします。あの人に初めて会ったときも、こんな気持ちだったかな。飲み干すと、頭から暑けが引いて、後味もとても爽やか。
 まるで、今の私みたい。
 今でも街を歩くと、どこかにあの人がいる気がして、目で追ってしまう。宇多田さんの歌を聞くと、まるであの人が私にかけてくれた言葉みたいで、焼き付いて離れない。
 でも。私ももう大人だから。諦めなきゃいけないことってあるから。でも、結局毎年苺蜂蜜シロップ作るんだろうな。渡せなくても。
 大好きな味。大好きな思い出。大好きなあの人。
 また会えたら、横に誰かがいても、渡してしまおう。甘酸っぱい恋のシロップ。それで最後だとしても。あなたがくれた味でした。苺蜂蜜シロップの、後味まで爽やかな甘み。

 

(完)

 

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