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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

しあわせだな

一途

 

 幸福感やしあわせだな!という感動がスーパーマーケットの棚についてしまうようになったのは、幸せにしてくれるという約束がどうやら心ばかりで本当ではないということに気づき、結婚し離婚してからだった。幸せそうな感じをもはや誰も気遣ってはくれず、ジャムや蜂蜜でいっぱいのスーパーマーケットの棚を眺めては、幸せそうな感じはするな!と思うばかりの日々となった。その棚に手を伸ばし吟味するに至ることで、蜂蜜の純度や透明感や蜜がいかに綺麗であるかをどうやら競っているらしいことがわかる。澄んだアカシア蜂蜜が一番だな。棚を眺めてまずそう思うのである。ニセアカシアという北米原産のマメ科樹木の木の花から採取できる蜂蜜である。ハンガリー産から始まっているのだが、日本のアカシア蜂蜜の出来は素晴らしいように思う。ホットケーキを焼きましょうという歌詞のヒットソングがあるのだが、年を経てそれが大事だな!と思うようになった。原初のお菓子作りはホットケーキを焼いてバターと蜂蜜をたっぷりとかけたものだった。それでいいのである。トロリと蜂蜜をたらすと蜂蜜がキラキラキラし幸せな心地になる。これでいいのである。ある日のキッチン。幸せな心地は老いても続くとは、耳にタコができるほど聞いていたことだ。

 

(完)

 

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