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蜂蜜エッセイ応募作品

気の良いはちみつ屋さん

小林 功一

 

 今から二十年以上も前のことになりますが、自分はまだ、独身のころのことです。確か六月で、地区の奉仕作業で幹線道路脇の草刈りの日のことでした。
 同じ市内で蜂蜜店を営むご主人が、私たちの地区にも巣箱を置いていて、その日蜂蜜を搾る作業にきていました。天気も良くて、作業もはかどり十一時頃には作業を終えて、慰労会をしようと準備をしていたところに、そのご主人が顔を出してくれて、これから慰労会ならば、焼酎に搾りたての蜂蜜を入れて飲んだら、疲れも取れてそれは美味しいというようなことを話してくれました。
 一人が、冗談半分に「そんなにうまいものなら持ってきて飲ませてみな」と言うと、正直で気の良いご主人は、その足で、酒屋に行って、量り売りの焼酎に搾りたての蜂蜜をたっぷりと入れたものを二 ・七リットルのペットボトルに二本も持ってきてくれました。
 冗談半分に言った方も、さすがに恐縮していましたが、みんなで焼き肉を囲みながら、美味しくいただいて楽しいひとときを過ごさせてもらいました。
 それから何年か経ち、私も遅ればせながら結婚して、長女が一歳を過ぎた頃、その蜂蜜屋さんと同じ地区にある胃腸の名湯といわれる温泉に泊まりで行きました。
 翌日あちこち廻りながら、その蜂蜜屋さんでも買い物をして、ご主人に前述の内容を話したところ、懐かしがって、遠いところからよく来てくれたということで、売り物のリンゴを持っていってくれと言うのですが、さすがに売り物はいただけないと断りました。しかし全く譲らない、それならばお代を置いていくと言っても、いらないと断るので、ありがたくいただいて帰ったのですが、そんな気の良いご主人も、今は他界されました。
 次の世では、きっと徳の高い仏様になっておられるか、世の手本になるような少年に、生まれ変わっているのではないでしょうか。

 

(完)

 

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