白いスイカ
「これ、お姉ちゃんが好きな蜂蜜のお菓子。」
妹が渡してくれたのは、生の蜂蜜をたっぷりと使ったお菓子だった。以前、私が蜂蜜好きだと話していた、と彼女は言うが、その記憶は全くない。ただ一つ言える事は、確かに私は蜂蜜に目がないと言う事。つまり、私本人でさえ忘れていた話を、妹は覚えていてくれたのだ。それがとても嬉しくて、涙が出そうな程だった。
しかし、迷った挙げ句、私は答えた。
「ごめん、今は蜂蜜は食べられないんだ。」
え、と目を見開き驚いた後に、残念そうな顔になり、最後には申し訳無さそうな表情をした妹の顔が忘れられない。
「抗がん剤治療中は免疫力が下がるから、蜂蜜とか、生の食べ物は控えないといけないんだって。」
そう説明する私に、
「ごめんね、知らなくて。」
と答える妹に、胸がチクリと傷んだ。
こっちこそ、と言おうと思って、やめた。
「私が蜂蜜好きな事を覚えていてくれて嬉しいよ!絶対元気になって、そのお菓子、三箱食べるから!」
その時にまたプレゼントして!とおどける私に、
「三箱とか、図々しい!」
と、妹は笑顔になった。
もちろん、何も言わずに受け取ることも出来た。しかし、妹の事が大好きで、大切だからこそ、嘘は付きたく無かった。妹との関係を大切にしたかった。照れ臭いから本人には言わないけれど。
あれから半年。私の治療も終わりが見えてきた。
元気になったら、一番に妹に連絡するつもりだ。
もちろん内容は、「蜂蜜のお菓子、三箱!」の一言。
図々しいと言われようが、妹とのあの約束が、私を支えて来たことを必ず伝えるのだ。
そして、一緒にあの蜂蜜のお菓子を食べよう。
きっと、どんな高給菓子よりも甘くて美味しいだろう。
(完)
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