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蜂の子じいさん

二島なつめ

 

 蜂の子じいさん。
 友人の祖父を見るたびに、そう思っていた。

 というのも、友人の祖父は毎晩晩酌で蜂の子を食べているを聞いたからだ。
 その話を聞いたとき、わたしは小学校低学年で、蜂の子を見たことがなかった。
 ただ、そういう食べ物があるということは知っていた。
 「蜂の子ってどんなかたちしてるの?」
 そう聞いたわたしに、
 「蜂と同じだよ、羽が生えてないのもある。お母さんもお父さんも蜂の子食べるおじいちゃんを見るのも嫌がってるんだ」
 友人はそう答えた。

 元々虫という虫が苦手だったわたしは体中に鳥肌が立ち、しばらくそれが治ることはなかった。
 そんなおそろしいものを毎日食べる人がいるのか。
 友人の祖父は穏やかな優しい人だと思っていたが、その日から急に恐ろしい鬼のように思えた。

 夏、家族旅行で泊った宿で佃煮が出た。濃いあめ色に炊き上げられたそれはえびのように見えた。たまごみたいなものもある。
 わたしはそれを食べた。
 母はわたしを見てギョッとしていたが、「おいしい?」と聞いた。
 わたしはうなずいた。
 それは甘辛く、たまごのようなものはトロッとして、えびのようなものは香ばしかった。ご飯がよくすすむ。母の分も食べた。
 全部食べ終わってから、それが蜂の子だと知った。

 その夜、わたしは蜂の子じいさんに心の中で謝った。
 そして、今度会ったら「蜂の子食べたよ。おいしいね」と言おうと思った。
 きっとあのおじいさんは穏やかに笑うに違いない、と。

 

(完)

 

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