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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

一本松の仇討ち

松浦 馨

 

 八田さんは、その時体調が悪かった。だから長年、庭で飼っていたミツバチを守ることが出来なかった。ミツバチはスズメバチの襲撃を受けたのだ。
 八田さんは奥さんにスズメバチを捕らえよと命じた。奥さんは果敢にも、虫取りのタモを持ってミツバチの巣箱の脇に立った。
 スズメバチの羽音はグイーングイーンと唸るようだし、獰猛に攻撃を仕掛けてくる。一匹だけでも十分に怖い。八田夫人は頑張った。だが15匹捕獲したあたりで、ブチ切れた。「もういやだっ!!」。当然だ。よく頑張ったと思う。
 だがミツバチは全滅してしまった。
 八田さんの近所に住む私は、毎年蜂蜜のお裾分けを頂いていた。
 白金色に輝く蜂蜜の綺麗だったこと。甘かったこと。もう舐められないのかと思うと残念でたまらない。
 しかし話は終わっていなかった。里山暮らしの達人の八田さんは、捕虜にしたスズメバチの一匹に細い紐を括りつけてそっと放した。
 蜂は自由になった喜びに飛び出した。
 八田さんは目印の紐を見失わないように追いかける。
 追跡するも、そう長い距離ではない。
 スズメバチはとある木の根元に潜った。そこが彼の巣だった。
 八田さん、「しめた」と取って返すと、里山仲間を招集して蜂の巣をまるごと
 頂いた。中の蜂の子はすぐに取り出されて冷凍。
 やがてコロナが収束したら仲間の飲み会のつまみになる。
 この辺りには大昔、大きな一本の松があったそうで一本松と呼ばれている。

 

(完)

 

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