滋養甘味
友人に蜂蜜を貰った。
普段食べていたチューブのものとは違う。大きな瓶に入っている。
彼がお土産で買ってきたものだが、はて、どこの土産だったか?
ただ、安くないのは確かだ。
普段と言ったが、毎日食べているというわけではない。むしろほとんど、使わない。母が料理に使うか、パンケーキにかけるくらいの使い方しかしたことがない。だからよく余るし、放置されてかちかちに固まるのはよくあることだった。
とはいえ、この蜂蜜も同じような運命を辿らせるのは、友人に失礼であるし、私自身、瓶いっぱいに詰まった贅沢品に興味があった。
試しにふたを開けてみると、濃密な甘さを包んだ香りが、鼻を刺激する。
ふと、幼稚園の時のことを思い出した。みんなが花壇の花びらをむしって、根元を吸う。私もみんなの真似をした。確かに甘かったし夢中になった。でも、誰かが間違えて虫ごと吸ったと聞いて、それからやらなくなった。
話は今に戻るが、この蜂蜜の香りはその時の味と同じだった。と思う。
いかんせん、かなり昔の話だ。それにいい思い出というより、苦虫を噛まなくてよかったという感じだ。
瓶を少しだけ傾けると、中の蜂蜜はゆっくりと、まるで現実と時間の流れが異なるかのように、傾いた方へ流れていく。少し面白い。
眺めていても、それはそれで楽しめるが、やはり食べ物は食べてみなければ始まらない。どう食べるかを少し迷って、とりあえずスプーンですくってみることにした。
スプーンからこぼれた蜂蜜がトロトロと琥珀色の滝を作り上げる。
見とれてしまいそうだが、思い切って口に入れる。
舌に染み入るような甘さが広がる。そして長い間絡みついたと思うと、強烈な香りだけを残して跡形もなく溶けてしまった。
たった一口。一瞬のこと。だが、かき氷を食べすぎて頭が痛くなるのと同じような衝撃が鼻に来た。
甘すぎて痛くなる。というのは経験のないことだった。
ならばと思い、食パンを持ってきて塗って食べてみる。
すると、やはり刺激が緩和され、蜂蜜の独特な甘味が優しくパンを包んでいた。
これほど美味な食パンは食べたことがない。これから毎朝、パンにつけて食べるだろう。まだ蜂蜜は瓶いっぱいにある。
蜂蜜を使った他の食べ方も探してみようか。
私の人生に蜂蜜が絡んでくるのは、これからのようです。
(完)
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