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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂の子の思い出

石黒愛子

 

 私がまだ7,8歳の頃、蜂の子を始めて食べた。いとこの家に遊びに行ったときおじいさんから「これ栄養たっぷりでうまいぞ」と勧められたのが蜂の子だった。
空き缶のふたを開けて見せてくれたが、白い虫がぞわぞわという感じで横たわっていて気味が悪かったの覚えている。おじいさんはそれを一つつまんでポイと口の中に入れて食べた。私もいとこも無言のまましばらく箱の中の様子を覗いて、白い透き通った細長い無視をじっと観察した。
おじいさんは「これは蜂の子といって蜂の幼虫だよ。蜂蜜をエサにしてそのうち蜂になるのだ。」と言った。この姿からはミツバチのあの姿はどうしても想像できなかった。
戦後の食糧難の頃で、私は常に空腹状態であったがさすがにこれを食べたいとは思わなかった。おじいさんは手を伸ばして次から次へと蜂の子を口の中に放り込んでは、「甘いぞこいつは。蜂蜜を食っているんだからな。」にこにこしながら満足そうだった。
見ているうちにこの白い虫が、甘いお菓子のように思えてきた。空腹にがまんできず私はとうとう一つつまんで口に入れた。ムニュとした感じが喉を通り過ぎた。
甘いとか辛いとか味わっている余裕はない。流し込んだという方が正しいだろう。
いとこはびっくりした顔で固まっていた。おじいさんは「どうだ」という顔だった。私はといえば苦い薬を飲むような感覚だった。
その後は、蜂の子から遠ざかって忘れかけていたが、テレビのドキュメンタリー番組で「昔はタンパク質の補給のためにイナゴ、ザザムシ、蜂の子を昆虫食として食べていた」との説明とその画面が映し出されていたのを見て子どもの頃を思い出した。
現在はサプリメントとして販売されているらしいが、私はもっぱら蜂蜜をこよなく愛し、トーストパンに塗ったり、ホットケーキにたっぷりかけたり紅茶に入れたりと贅沢に使っているがミツバチがせっせと集めてくれているのだと考えると遠い昔の貴重な体験とともに大切にしたいと思う。

 

(完)

 

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