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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

お守りプロポリス

タタミナラシ

 

 一人暮らしの祖母から荷物が届いた。一抱えほどの大きさで、明らかに中身を詰めすぎたその段ボールは、ガムテープで梱包された上からさらにガッチリと紐で縛られていた。
「あらあら、お義母さん、また送ってくださったのね」
そう言って荷物を開ける母の横から、めぼしいものがないか物色する。裏庭でなったみかんに、野菜、赤飯のパック、せんべいといったものばかりで、特に目新しいものは見つからなかった。
自分の部屋に帰ろうとしたとき、何かしらコレ、と母が言った。みると手の中に茶色の小瓶を持っている。母が表面のパッケージを読もうと小瓶を傾けると、カラカラと中で錠剤が動く音がした。
「プロポリスってなに?」
表面に書いてあった商品名を訊くと、母は少し困った顔をして、あんまりわかんないけど蜂関係よ、と言った。
少し気になった僕は、ポケットからスマホを取り出して調べた。
「蜂が巣作りの時に使う分泌物らしいよ。抗菌作用って書いてある」
出てきた結果をそのまま伝えると、そうなの、と母は改めて小瓶を興味深そうに眺めて、テーブルの上に置いた。

次の日から母のプロポリス攻撃が始まった。
毎朝、朝食の端に琥珀色をした楕円体の粒が三錠、小皿に載せて置かれるようになった。
「俺、別に健康だからこんなのいらないんだけど」
そう言うと、母は弟の弁当を作りながら、せっかくお義母さんが送ってくれたんだからちゃんと飲みなさい、とこちらに背中を向けたまま答えた。
しぶしぶ飲み続けてしばらく経ったある日、僕は風邪を引いた。ただ、いつも数日寝込むのが常なのに、その時はわりとすぐに良くなった。
「きっとプロポリスのおかげよ」
母は嬉しそうにそう言うと、祖母に電話をかけ始めた。
「この前もらったプロポリスのおかげですぐ治ったみたいなの。ありがとうございました」
部屋の壁越しに電話の声を聞きながら、そんなのまぐれに決まってる、と風邪の余韻が残る頭で僕は思った。
ただ、母からそんな連絡をもらって、祖母は嬉しくなったらしく、それからの荷物には必ず茶色の小瓶が入るようになった。
「別にプロポリスなんかなくたって、若いんだからからすぐ治る」
そう強がって、今はもう僕は母の前でプロポリスを飲まなくなった。
でも実は、少し体調に異変があるときや勝負のときは、今でもこっそりとプロポリスを飲んでから家を出ている。

 

(完)

 

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