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蜂蜜エッセイ応募作品

少女の蜂蜜

神野 榮美

 

 夜、眠る前にスプーン一杯の蜂蜜を、ゆっくりと口にする。
 この習慣を始めたのは、蜜蜂の生態系について書かれた本の、ある部分を読んだからだ。要約すると、
 「人間の脳はグリコーゲンがないと死滅するが、その蓄えは三〇秒分しかなく、肝臓が二十四時間供給し続けている。その肝臓も8時間分しか蓄えられない。早めの夕食で就寝すると夜中に備蓄量が減少し、脳は、筋肉組織を溶かしてグリコーゲンに変える指令をだす。ストレスで良い睡眠がとれず、結果、心臓血管疾患、糖尿病、肥満、免疫崩壊、年齢の加速……防ぐには眠る前のスプーン一杯の蜂蜜が最適!」
 私はすぐに本を閉じ、戸棚に蜂蜜を捜した。
 
 体は一つしかないので、比べることは出来ないが、蜂蜜の甘さは、琥珀色の優しい思いを連れてきてくれる。毎夜、眠る前に少女のような気持ちになるのだ。悪かろう筈がない。

 

(完)

 

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