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蜂蜜エッセイ応募作品

家にハチミツ

松本俊彦

 

私の家には、ハチミツが必ず常備されている。ないと寂しい。大概は、パンに塗って食べる用だ。うちの朝食は食パンである。在宅勤務が多くなり、外出することが少なくなり、体重が気になるようになり、少し前から一枚の食パンを妻と半分ずつ食べるようになった。妻がトースターでパンを焼いてくれ、その日によっていろいろなものを塗ってくれる。マーガリン、シュガーペースト、いちごジャム、マーマレード、スライスチーズが乗っていることもある。何日かに一回はハチミツが塗られている。甘いもの好きの私にとって、焼きたての食パンにハチミツが塗られたものは、最高に近いごちそうである。その日ばかりは、食パンをまるまる一枚食べたいと思う。
子供の頃、私の家にはやはりハチミツが常備されていたと思う。日がたつと容器の中でカチカチに固まり、湯で溶かさないと出てこないようなものだったが、それでも必ず家にはそれがあったように思う。その理由のひとつに、学校の給食にハチミツが出なかったことがある。当時の給食に米飯はなく、毎日食パン2枚が出された。そして、それに塗るものも必ず付いていた。マーガリン、イチゴジャム、リンゴジャム、チョコレートクリーム、ピーナッツクリーム、マーマレード。そう、なぜかハチミツはなかった。今はあるのかもしれないが、いや、もしかしたら当時もあったのかもしれないが、給食用の小分けしたハチミツというものは、給食で出されたことがなかった。給食のメニューは、当然家庭のメニューより多い。だから、給食で初めて食べたものは数多くある。誰しもそうだろうと思う。しかし、ハチミツは学校給食で味わうことができなかったもののひとつである。パンを焼いても焼かなくても、ハチミツを塗って食べるそれは格別である。それが学校にないから、家にあったのではないかと思う。
これからも、何日かに一回ハチミツを塗った食パンを食べる生活は続くだろう。この頃のハチミツは、なぜか湯で溶かさなくても出てくるなあなどと妻と話しながら、ハチミツを食べる生活が続くだろう。そんな何てことない生活が、実はものすごく貴重で愛おしいものであることを、私はわかっているつもりである。

 

(完)

 

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