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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

父と蜂蜜と私

白梅 かおる

 

父はレンゲ畑にお手製のミツバチの巣箱を置いた。体の弱かった父は、体に良いものを自分でよく作った。数か月すると美しい六角形を沢山繋げたミツバチの巣を持って帰ってきた。
父は手に滴る蜂蜜をぺろりと舐めた。そして、おもむろに私に差し出した。私は巣毎がぶりと噛み締める。口の中に甘くトロリとした蜂蜜が口中に広がる。微かにレンゲの香りがした。父は蜂の子がたくさん入った巣を軽くあぶってほじって食べた。恐る恐る私もほじって食べた。プチプチと口の中ではじけて思いのほか美味しい。元気が漲ってきた。
父は一升瓶に蜂蜜を入れて、農作業で体がきつくなるとよく蜂蜜をなめていた。牛乳に混ぜたりビスケットに挟んだりして食べた。私が口内炎で痛がると傷口に付けろと蜂蜜を渡した。飛ぼ上げるほど痛かったが、数日すると良くなった。殺菌効果の効果か。近所の人が父の蜂蜜を欲しがった。父は惜しげもなく分けてやっていた。今は実家もなくなった。レンゲ畑も消えてしまった。嫁いでから近くに蜂蜜販売の店を見つけた。店頭にミツバチの巣が飾ってある。口数少ない父との子供のころの懐かしい思い出と重なる。試食品を舐めてみる。ああ、父のはちみつの味だ。瓶詰めを買って息子に渡した。蜂蜜にプロポリスを少し垂らして舐めるように伝えた。数年前にインフルエンザに罹った息子に予防になるからと伝えた。お陰様でその後、風邪をひかなくなった。息子にも元気でいてほしい。父の子供に対する愛情のバトンタッチをしているような気持になった。
毎日、紅茶に入れたりホットケーキにかけたり、レモン漬けにしたり料理に使ったりと色々な用途に使っている。口内炎の時のも。食べるたびに愛情表現の不器用だった父の温かさを思い出している。

 

(完)

 

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