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蜂蜜エッセイ応募作品

グレープフルーツ

けんすけ

 

 グレープフルーツに蜂蜜をかけるとおいしい。皮と薄皮を剥いて、小鉢に盛り、冷蔵庫で冷やしておく。そうして仕上がったグレープフルーツに、蜂蜜をかけるだけで極上のデザートになる。ぷちぷちとした果肉と、とろっとした蜂蜜、甘味だけでなく酸味と苦味を備えた果肉と、あま~い蜂蜜の相性は抜群だ。
 グレープフルーツは、果肉が赤いのでも白いのでもいい。ちなみに僕は赤いほうが好きだ。
 母には僕が白いのを好きだと勘違いしている時期があった。赤が好きだと言っているのに、白いグレープフルーツばかり買ってくるのだ。母も赤いのが好きなのに、息子は白が好きだからと白を選んでいたのである。優しいけど、おっちょこちょいな人なのだ。親子だからか、母と僕の味覚は似ている。性格だって似ていると思う。僕もおっちょこちょいだし。優しいかどうかは、分からないけれど。
 そういえば蜂蜜にも、赤っぽいのや白っぽいのがある。瓶に詰められた琥珀色の液体は、眺めているだけで心が躍る。蜂蜜の色は採る花によって変わるのだそうだ。味わいも香りも違うらしいから、いつか食べ比べをしてみたい。僕の好みの蜂蜜は、きっと母も好きなんだろうと思う。
 グレープフルーツと蜂蜜が合うことを教えてくれたのは母だ。テレビか何かで知ったのだろう。そのくせ、そのときの母は少し得意げだった。すぐに調子に乗るからいけない。母も、僕も。
 そんな僕たちも歳をとった。昔に比べたら、落ち着きが出てきた。そして、忘れっぽくもなっている。だけど母は、グレープフルーツは必ず赤いのを買ってくる。
 おいしいものを食べるのは幸せだし、そのおいしさを家族で共有できるのも、また幸せだ。そして家族が健康でいるのが、何より幸せだと僕は思う。だから、おいしくて健康な食品というのは、幸せの象徴なんじゃないだろうか。一人暮らしを始めて、そんなことを考えるようになった。
 今日、母が僕の家に来る。会うのは一年ぶりだ。冷蔵庫では、皮と薄皮を剥いたグレープフルーツを冷やしている。母の好きな、赤いほうだ。

 

(完)

 

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