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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

蜜色の時間

松本 麗奈

 

 私は昔からお菓子を作るのが好きだった。とは言っても名前の有る様な物を作れるようになったのは高校生になってからかもしれない。作るのが大好きな私と、食べるのが大好きな母。母の好物にははちみつが良く合う。大好物のスコーンにホットケーキ、パウンドケーキやクッキーに紅茶。私がしばらくお菓子を作らないと、しっかり自分でおやつを買ってきてしまう。大好きなスコーンに滴るほどはちみつをかけて食べている時の母は、本当に幸せそうである。そんな母を父が見ようものなら、「痩せない努力だな」と言われてしまう。まるで森の熊さんの様な人なのだ。最近で言えば、一昨日の夕方にコロナのワクチンを控えて緊張していた私は、じっとしていられず、アーモンドとレーズンの入ったバナナケーキを作った。これにもはちみつはピッタリだった。美味しく食べてくれる人が居ると言うのは、何にも変えがたい幸せだとこの歳になってから気がついた。そんなことさえ分からなかった自分に呆れてしまう。美味しいねと言ってくれる家族や知り合いが居るかぎり、レシピの無いお菓子作りはこれからも続くだろう。そんな時、多少甘さが足りなくても、ぐっと味を持ち上げてくれるはちみつさんにこれからもお世話になりそうだ。

 

(完)

 

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