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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

石塔の中にミツバチの巣

無子

 

 里のお墓は山の中腹の一番上段にあるので、見晴らしがいい。
 でも、江戸時代から続いていた家系は、不運続きで、数年前、後を継いでくれた叔母の死を最後に絶えてしまった。
 私は両親が幼いとき病死してしまったので、親無子になってしまった。
 昭和20年4月女学校に通っていた叔母が学徒動員で軍需工場で爆死した。
 叔母は気立てのいい、やさしい子で誰からも好かれていた。親の無い私の事を可愛がってくれ、5円の小遣いを私のためにフクちゃんの玉入れと文字盤を買ってくれ、残りの3円は亡くなったとき、財布に残っていたと聞き、叔母に申し訳なく、叔母のことを思うと涙がとまらない。戦争中で食べ物が無く、甘い物など口に入ることもなかった。叔母も甘いものがほしかっただろうに、我慢していたのでしょう。
 青春時代も食べ物も満足に食べられずに亡くなった叔母が痛々しく、かわいそうでたまらない。
 数年前から、お墓まいりに行くと、骨壺を入れるところに、ミツバチがたくさん群がっていた。よく見ると、ミツがだらだらこぼれていた。こんな所にミツバチが巣を作ったんだ。ここなら何かに襲われることもないので安全だと、ミツバチって、頭いい、なんて、単純におもったりした。
 だが、ハチに刺されると危ないので、巣を取り払おうとしたが、ふと、考えた。ミツバチは生前、甘いものが食べられなかった叔母のために、たっぷり甘いミツを食べさせてくれたのだと、これは、ミツバチの好意ではないかと、ミツバチに「ありがとう」と手をあわせた。

 

(完)

 

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