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蜂蜜エッセイ応募作品

忘れられた瓶

まめどんぐり

 

蜂蜜には、苦い思い出がある。

 2005年の秋、新婚旅行でトルコを訪れた。
 私たちは、素晴らしい風景、遺跡、おいしい食べ物を楽しんだ。
 トルコは広い国だから、かなりの距離を移動しなければならない。荒野の中にポツンとあるSAに立ち寄った。私たちはそこで、搾りたてのザクロジュースを味わった。
 商品棚を見ると、蜂蜜の瓶が目に留まった。
 300ccくらいの容量だろうか。瓶の中には、ピスタチオやアーモンドなどのナッツがぎっしり、整然と並んでおり、蜂蜜で満たされているのだ。
 きれいだ、それに、おいしそうだ。
 値段は覚えていないが、それを買った。

 その蜂蜜は、主人の実家へのお土産とした。
 2、3ヶ月に一度顔を出し、滞在中キッチンに立ったが、瓶はいつまでも棚にしまわれたままだった。冬を越して、美しかった瓶の中身はすっかり白く固まってしまった。
 その頃の私は、まだこの家に対して遠慮しており、自分から「これを開けてみましょう」だとか「もらっていいですか」とは言えなかったのである。
 そして、とうとうその瓶は棚から消えてしまった。おそらく、処分されてしまったのだろう。

 実はもうひとつ、私たちの結婚式ではオリーブオイルを引き出物とした(これは、ネットで「飲める」という驚きの口コミがあった高級品である)のだが、そのオリーブオイルも蜂蜜と同じように棚に長いこと入っていた。しかし蜂蜜がなくなってしまったので、私はあわててそれを料理に使い救出した。

 一匹の蜜蜂が一生かけて集める蜜は、ティースプーン一杯分だという。だとすれば、一体あのひと瓶には何匹分の蜜蜂の労働が詰まっていたのだろうか。
 思い出すたび、残念な気持ち、ごめんね、と謝りたいような気持ちがよみがえってくる。

 

(完)

 

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