君塚 健一
小学校に入る前、風邪をひきたくて仕方がなかった。それも熱が出るだけでは駄目で、母が診て確実に赤いと分かるほど、喉が炎症を起こさなければならなかった。何をやったら風邪をひくのか分かっていなかったから、ただただ喉が痛くなるのを待ち望んでいた。もうお分かりだろうが、この時だけは蜂蜜を舐めさせてもらえたからだ。朝、昼、晩のご飯の後、スプーン一杯の蜂蜜を食べさせてもらえた。美味しかった。喉の痛みは辛かったが、蜂蜜の甘さの方が勝っていた。また熱が高く寒がっていると、蜂蜜入りの紅茶を飲ませてもらえることもあった。身体の中が一気に暖まった。不思議と一日、二日で喉の痛みは収まってしまって、もう食べられないんだと悲しんだものだった。なぜ風邪の日だけだったかは、母も覚えていないそうだ。
風邪や喉の痛みは蜂蜜で治すものだと思っていた。小学校に入って、それが普通でないことを知った時には少々驚いたが、今でも喉に違和感を覚えたら蜂蜜を舐めている。職場などでは手頃な喉飴を利用するが、家では専ら蜂蜜だ。もう半世紀もそうしてきた。よっぽど酷い時でないと風邪薬は飲まず、殆ど蜂蜜だけで風邪を退治してきた。”病は気から”の言葉の如く、風邪は蜂蜜で治るとの幼児体験がプラセボになっているのかも知れないが、ビタミンとミネラルが豊富なのだから風邪薬になっても不思議ではないのかも知れない。甘みが脳を活性化している可能性もあると思っている。
こう書いているうちに気になり始めたので、蜂蜜の効能について調べてみた。そして見付けた。漢方薬として使われている。解説によると蜂蜜は、消化吸収力を高め、胃痛、腹痛を緩和するので、食欲不振、疲れやすい方におすすめ、とある。また、体を潤す作用にもすぐれ、咳、痰、皮膚の乾燥、風邪予防、便秘、口内炎にも効果的です、ともある。母に教えられ、半世紀も続けてきた風邪への対処法は、あながち間違いではなかった。結果として風邪が治るなら、それで良いやと蜂蜜を舐めてきたが、漢方の理論で裏付けされているとなると、益々風邪薬が要らなく思えてくる。
世はコロナ真っただ中だ。オミクロン株の感染力は、デルタ株の数倍と考えられているそうだ。昨今(1/24現在)の感染者数の増加トレンドを見ていると、最早感染は防げないのではないかと思えてしまう。しかし弱毒性らしい。きっと蜂蜜で治るに違いない。
(完)
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