はちみつ家 > 蜂蜜エッセイ

ミツバチと共に90年――

信州須坂 鈴木養蜂場

はちみつ家

Suzuki Bee Keeping

サイトマップ RSSフィード
〒382-0082 長野県須坂市大字須坂222-3

 

蜂蜜エッセイ応募作品

おばあちゃんの「みつの飴」

櫻川ふみ

 

 東京に嫁いだ一人娘から、おめでたの知らせがあった。飛び上がるほど嬉しかったが、反面心配も大きかった。高齢の初産なのだ。その上持病があったので、母体が心配だった。
 徳島への里帰り出産は認められず、東京の病院で出産すると言う。
 ふと、四十年前の自分を思い出した。上勝町の農家に嫁ぎ、初めて身ごもったとき、姑から「栄養つけて、ええ子を産まないかん」と言われた。
 姑にとっても初孫で、期待が大きかったのだ。「妊婦には『みつの飴』が一番じゃ」と姑は言う。どんな飴玉だろうと思っていると、どんとガラスの瓶を食卓に置いた。それは天然の蜂蜜だった。上勝町では、蜂蜜を「みつの飴」というのかと、初めて知った。
 白く固まった「みつの飴」を湯呑みにたっぷり入れ、お湯で割って飲ませてくれた。花のような香りがした。
 「優し~い甘さが、体にしみ込んでいくわ」と私が言うと、「そうじゃ、みつの飴は、吸収が早いし、脳のエネルギーになるけん、頭のええ子ができるよ」と言って笑った。元看護師だった姑のひとことは、確信に満ちていた。
 昭和四十七年の元旦に、無事元気な長男が 誕生した。
 「そうだ! 今度は娘に」と思った。
 蜂蜜をたっぷり入れたマドレーヌを焼いて、レンゲとアカシアの純粋蜂蜜とともに東京の娘に送った。
 「蜂蜜ありがとう。マドレーヌ、しっとり甘くておいしいと思ったら、蜂蜜入りね」とのメール。
 「みつの飴は吸収が早いし、脳のエネルギーになる、とは上勝ばあちゃんの言葉」と返信。
 昨年5月3日、自然分娩で、無事女の子を授かった。
 「ばあちゃん、曾孫ができたよ。ばあちゃんのお蔭です」
 今は亡き姑の墓前に報告した。
 周りは、真っ白いすだちの花の香りが漂っていた。
 「親から子 子から孫にと みつの飴」

 

(完)

蜂蜜エッセイ一覧 =>

 

蜂蜜エッセイ

応募要項 =>

 

はちみつ家メニュー

Copyright (C) 2011-2017 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.