大阪のアン
「おじいちゃん、ハチさんってボクたちにミツをくれるのに、ボクたちはハチさんに何かあげているの?」
5歳の孫が、なんとも真剣な顔で訊いてきた。いい点に気付いたものだ。
「物をいただいたり、なにかをしてもらったりしたら、きちんとお礼を言うのですよ」
ママにいつも口癖のように言われている。
我が家にやって来て遊んで帰る時は、必ず「ありがとうございました」と、丁寧にお礼を言って帰って行く。
(陰の声)ーこちらが遊んであげていると言うよりも、遊んでもらっていると言った方が当たっているかもしれない。
「多分、ハチさんにはあげていないと思うけど、ハチさんがミツを集めやすい環境を作ってあげていると思うよ」
我が家から1時間半ほどドライブしたところに、大きな果樹園がある。そこに連れて行って、いろいろと話を聞くのがいいのではないかと思った。
「じいちゃんはあまり詳しくないから、今度の休みに果樹園に行ってみよう。そこの人から、話を聞いてみるのがいいだろうね。どうだい?」
「行ってみようよ!」
孫の喜ぶこと頻り。
2人でのドライブは久しぶりだった。お客様扱いでリアシートに座ってもらった。
まちを抜けると、車も少なくなり、緑がいっぱい目に飛び込んできた。
日曜日なのに、果樹園ではちらほらと働いている人がいた。その中の一人に声をかけた。事情を説明すると、「私からお話しさせてください」と、孫へ歩み寄って行った。
「この果樹園では、たくさんの八チさんが飛び回っているんだ。八チさんがなんの心配もなく飛び回ってミツを集められるように、私たちはなるべくハチさんに危害を加えない安心・安全な薬剤しか使わないようにしているんだよ」
分かりやすい説明に、孫は真剣に耳を傾けていた。
「あっ、そうか! 物でお返しするよりは、回りをきれいにして気持ちよくお仕事できるようにしているんだね」
「ぼく、よく分かっているね。だから蜜蜂と人間は共存しているんだよ」
孫は頷いていた。私も頷いた。
お陰で有意義な一日を過ごすことができた。
(完)
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