マッチ
小学校低学年のころ、両親が離婚して、それから私は、母親と一緒に暮らすことになった。
母親は生活のため、朝早くから、夜遅くまで仕事に追われていたので、私の面倒は祖母がみてくれた。
ある冬の朝起きると、頭が痛く熱が出て、体が重く感じられた。それにも増して
祖母に何か言おうと思っても声が出なかった。
小学校を休み、祖母が近くのかかりつけの医院に連れて行ってくれた。そこで診察してもらい、うちに帰り、薬を飲んでふとんに入り、熟睡した。
午前中いっぱい寝たと思うが、時間は正午近くになっていた。熱はやや収まった感じがしたが、やはり声が出ない。
私は子どもながら不安になった。このまま一生声が出なかったらどうしよう。そう考えていると自然と涙がでてきた。
祖母は、不安がるそんな私を見て、台所で何かを作り出した。それから数時間ふとんの中で、寝たり、目を覚ましたり、いろんなことを考えたりして、時間は夕方になっていた。
まだ声が出ない。私は悲しくなってふさぎ込んでいると、祖母がコップに入れて
何か持って来た。
「これ飲んでみなさい。大根はちみつよ。」
私は、藁をもすがる思いでそれを飲んだ。はつみつに大根をただ入れて少しねかした物であったが、飲んでから数十分経つと、かすかに声が出てきた。
私は、今度はうれしくて涙が出てきた。
祖母が言うには、祖母が小さい頃、大根あめと言って咳止めやのどの痛みにいいと言われ、母親が作ってくれたと言う。
私も、娘が幼いころ、具合いが悪くなった際、作って飲ませたが、昨今、孫ができ、かぜをひいたときに、作ってあげている。
(完)
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