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蜂蜜エッセイ応募作品

精製蜂蜜は国定の薬だった(二)

渡辺 碧水

 

 【同タイトル(一)から続く】
 実は、もう一つ先に疑いの目で読んだ部分がある。白鳥論文の引用前半の「日本薬局方では一九三二年の第五改正日本薬局方以降ハチミツおよび精製ハチミツの項目が設けられた」との記述である。
 うろ覚えながら、『日本薬局方』の初公布(初版)は明治時代で、最初から「蜂蜜」は掲載されていたと知っていたからである。そこで、事実関係を改正ごとに調べ直してみた。
 『日本薬局方』は、一八八六(明治十九)年六月二十五日の官報第八九四号附録(内務省令第拾号別冊)に掲載されたのが最初で、項目の四十一頁には「蜂蜜」があり、引き続き「精製蜂蜜」が掲載されている。それぞれに簡単な説明がある。
 そして、一八九一年の『改正日本薬局方』にも同様に掲載があり、一九〇六年の『第三改正日本薬局方』では更に「薔薇蜜」の項目も加えられ、蜂蜜薬品は三つになった。だが、一九二〇年の『第四改正日本薬局方』では再び「蜂蜜」と「精製蜂蜜」の二項目に戻っている。ここで、「薔薇蜜」の、第三改正での追加と第四改正での削除は何を意味するのか、新しい疑問が加わった。
 一九三二年の『第五改正日本薬局方』でも以前と同じ二項目だった。ついでながら、項目名は「蜂蜜」と「精製蜂蜜」であり、白鳥論文の記述にある「ハチミツ」と「精製ハチミツ」も厳密な表記としては誤りである。
 一九五一(昭和二十六)年の『第六改正日本薬局方』に至ってはじめて「ハチミツ」(副表記として「蜂蜜」も併記)と「精製ハチミツ」(同前「精製蜂蜜」)の表現になった。太平洋戦争終戦後の表記改革があったものと思われる。
 戦後復興の際、精査がなされたのであろうか、一九六一(昭和三十六)年の『第七改正日本薬局方』で、「精製ハチミツ」は削除され、「ハチミツ」だけとなった。白鳥論文の改正年・一九六六年は誤記。(以降、現行の二〇二一年六月の『第十八改正日本薬局方』に至るまで、項目「ハチミツ(MEL、副表記「蜂蜜」)」だけが掲載されている)
 改めて、なぜ「蜂蜜」に加えて、独立項目として「精製蜂蜜」や「薔薇蜜」が薬品とされたのか、また、なぜ七十五年も経て「精製蜂蜜」が削除されるに至ったのか、さらに加えれば、『日本薬局方』の解説に何編もの論文が引用されるような専門家が、なぜ事実と異なる内容の記述を一九六九年発表の論文で書いたのか、不思議に思うのである。
 これらの事情の解説書を探せていない。ぜひともどなたか教えていただきたい。

 

(完)

 

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