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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

彼女のはちみつ

たつた 蔦

 

その日は朝からなんだか頭がふわふわし、体はずっと冷たかった。
夏休みにもかかわらず、寒いなと思いながら友人宅へと向かった。
友達数人と宿題をする予定だったのだ。

だが、家に着いてもおなかが痛い気がして机に突っ伏していた。
もともと体は丈夫な方で、小さい事から健康優良児だった私は、これが体調不良だという認識がなかった。

熱もないし、咳も出ない、喉も頭も痛くない。
ただ、いつもよりだるくて寒い。疲れてるだけかな、と感じていた。

みんなが集まっても元気のない私を親友が心配してくれる。
弱々しい小さな声で「だいじょうぶ」と返すも、よっぽど大丈夫じゃなさそうだったのだろう、「ちょっと待ってて!」「おかーさーん!」と言いながらキッチンへ向かった。

戻ってきた彼女の手にはあつあつのマグカップ。
それは、はちみつを溶かしたホットミルクだった。
ふぅふぅしながら少しずつ飲むと体がじんわり回復していくのを感じた。「体に染みわたる」とはこういうことか、と幼いながらも妙に納得したのを覚えている。

はちみつの優しい甘さと共に、じんわりと私の心に感謝の気持ちが広がった。

 

「飲み終わったら少し横になって眠りなさい」と彼女の母親に言われ、親友の部屋のベッドを拝借し眠った。目が覚めたら朝の不調が嘘のように、体が軽くエネルギーに満ち溢れていた。

どちらかというと大人しく引っ込み思案な彼女が「ちょっと待ってて!」と言いキッチンに向かった背中はとても頼もしく、なんだか勇敢に見えた。

 

あれから数十年、今でも私たちは親友だ。
どちらかの家で会うときには、当たり前のようにホットミルクやコーヒーにはちみつを入れておしゃべりに花を咲かせている。

その傍らでは、彼女のわんぱく盛りの男の子達と私のおしゃまで口達者な女の子がにぎやかな声をあげて遊んでいる。優しく勇敢な彼女は、今日も子供たちに惜しみなく愛情をたっぷり注いでいる。

 

(完)

 

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