北川 圭子
子供のころ大きな瓶に白く固まった蜂蜜が入っていて、母や祖母はパンを焼くとそこから蜂蜜をスプーンで出してパンに塗っていた。私はそれを塗るかと聞かれると、その蜂蜜の塊の異様さになんとなく汚いと思えて、塗る勇気がなく、マヨネーズをつけていた。蜂蜜が固まって入っていたその瓶の光景が、私のトラウマになり、給食に蜂蜜が出てもこっそりとカバンに入れて持ち帰り、どうも蜂蜜は苦手なまま大人になってしまった。
ある時テレビで、蜂は一生かけてティースプーン一杯の密しか集められないことを知った。蜂は、刺されると痛くて、ただ怖いだけの存在だと思っていたけれど、ちょっと見直した。イチゴ農家さんが、ビニールハウスに蜂を買って放し、蜂に受粉させてイチゴが作られていることを知った。かぼちゃの受粉は蜂がしていてくれることを知った。蜂ってすごいんだと分かった時、蜂に感謝できるようになった。
ある初夏、小鮎が売っていたので佃煮にしようと思って買ってきた。山椒の実を入れて、酒と醤油とみりんと砂糖はお決まり。家々のレシピがあり砂糖はザラメを使う方がいいらしいと聞いていたのでザラメで作ることにした。けれど、どうも鮎がピンとならない。照りもこない・・・。もう一度秘訣を聞いてみると、「蜂蜜入れてみ、上手にたけるで」と教わった。そうか、蜂蜜だったんだ。もう一度鮎を買ってたいてみた。おかげで上手にできた。
またある時、野菜のスムージーを作ってみた。何を入れてもあまり美味しくなく、健康の為に仕方なく美味しくないまま飲んでいたけれど、テレビで蜂蜜を入れると美味しくなると教わり早速入れてみると、今までのスムージーとは味が格段に上がった。ポイントは蜂蜜だったんだ。
蜂蜜の隠し味のすごさを知り、それから我が家では蜂蜜は冷蔵庫の定番になっている。もちろんそのままパンにつけて食べることも。そして、蜂蜜を使うたびに、蜂が一生懸命集めてくれたことに、感謝していただいている。
(完)
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